眠れぬ夜を抱いて 


2007.1.18 野沢ファンはニヤリ 【眠れぬ夜を抱いて】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
野沢尚ファンがニヤリとするようなおまけがある。今までの作品のいくつかがいろいろな部分で登場してくる。おそらくファンはその場面がでてくるたびにニヤリとしてしまうだろう。そのことに何か重要な意味合いがあるかといえばそうではない。ただファンを喜ばせるちょっとしたおまけなのだろう。作品の内容は過去の作品に負けず劣らずの素晴らしい作品だが、ちょっと現実的ではないような気がした。過去の恨みが発展したできごととはいえ登場人物たちのありえない行動に違和感を感じた。

■ストーリー

ひとつの町で連続して起こる一家失踪事件。平凡な主婦、中河悠子(33)は、その町の開発者でもある夫を助けるために独自に調査に乗り出していく。だがそれが悲劇の始まりだとは気づきもしなかった…。悠子までを巻き込んで展開する残酷な復讐の罠、罠、罠!果たして彼女は夫の嫌疑を晴らして真相に辿りつけるのか。

■感想
冒頭に登場する銀行強盗。その後、場面は一つの町に移り雰囲気ががらりと変わる。最初は同じ物語なのかと信じられなかった。作品のトーンがあきらかに違っているのだ。しかしそれもだんだんと秘密が明らかになってくるにつれ、はっきりとした絵が浮かんでくる。冒頭のトーンとその後の平和な世界。この落差加減にはしびれる部分があった。

連続して起こる一家失踪事件。この失踪事件はまさに神隠し状態で興味を引かれる部分ではある。しかし蓋を開けてみると、なんとも不自然で納得のいかない失踪だと思った。この部分も含めて登場人物たちの行動の不自然さに違和感を感じた。隻眼の刑事などキャラクター的には面白いのだが、それもあまり生かされていないような気がした。過去の秘密を追いかけ、一つ一つ謎を解いていくというのは面白い部分ではあるが。

主人公である悠子という平凡な主婦にどれだけ感情移入できるか。僕は登場人物の誰にも感情移入できなかった。決定的なのは過去の恨みに対する思いがどうしても理解できなかったからだ。今よりも過去を大事にする気持ちが最後までわからなかった。

ミステリーとして特別に大掛かりなトリックがあるわけではない。人間の心理的な部分を巧みに衝くやり方はうまいと思うが、インパクトは小さい。読み終わってから印象に残っているのは隻眼の刑事くらいかもしれない。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
*yahoo.co.jp