ねじまき鳥クロニクル 第ニ部 


2006.6.19 意味不明な自虐的感覚 【ねじまき鳥クロニクル 第二部】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
何かを暗示しているその真の意味を理解できない。本作に登場する全ての出来事は何かの比喩であったり別の形として表現しているのだろうが、それが何なのかはっきりと理解することができなかった。本来なら激怒するような場面であっても主人公は終始自分の思考の渦にのめりこみ、他人との接触を避けようとする。現実世界の理不尽さを表現している箇所があり、その理不尽さゆえに理不尽なまま何の説明もなしに流されていく。どこまで想像力を働かせて読みこめるかがポイントなのか。

■ストーリー

猫が消えたことは、始まりに過ぎなかった。謎の女はその奇妙な暗い部屋から、僕に向かって電話をかけつづける。「私の名前を見つけてちょうだい」。加納クレタは耐えがたい痛みに満ちた人生から、無痛の薄明をくぐり抜け、新しい名前を持った自己へと向かう。名前、名前、名前。名づけられようのないものが名前を求め、名前のあるものが空白の中にこぼれ落ちていく。そして僕が不思議な井戸の底で見いだしたものは…。

■感想
第二部では猫が消えたことなどどうでもよくなっている。あるのは自分の妻が突然失踪したことによる喪失感とそれに伴った奇妙な行動。すべては妻の失踪に影響されているのだが、まだ加納マルタとクレタの存在理由がよくわからない。隣人であるはずの笹原メイのありえない行動。それに対する怒りの気持ちがあるはずなのにそうなるべきだったと勝手に自己解釈する主人公。作品を通して全体的に自虐的な印象を受けた。

すべて自分が悪いと思う心と、理不尽な事に対する怒りのやり場がないために心が不安定になる。そしてその怒りがちょっとしたことをきっかけとして爆発する。気持ちはわからなくもないが、極端に自虐的な部分とある部分では他虐的であったりと、心に一貫性がないので読んでいて少し気持ち悪かった。

水が枯れ果てた井戸と顔にできた謎の痣。井戸に入るという経験で悟りを開いたかに見えたが、そんなことはなくただ自分の体を痛めつけただけだった。僕自身は井戸に入り何か新たな悟りを開くものだとばかり思っていたが顔に奇妙な痣ができただけで終わったようだ。しかしこの痣がもしかしたら第三部に何か影響するのかもしれない。

細切れなエピソードそれぞれは考えさせられるものがあるが、全体を通すと結局何が言いたいのかよくわからない。ただ妻に逃げられて仕事もせずに家でぶらぶらしながら奇行に走っているだけのような気がしてならなかった。



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