ナイロビの蜂


2006.5.18 一人の男の心境の変化 【ナイロビの蜂】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
CMで展開しているようなラブストーリーではない。完全な社会派ミステリーだと思う。最後まで見れば、夫婦の愛の絆というものを感じることができるが、途中までは明らかに不正を暴く社会派ミステリーだ。いつの時代のどこの国でも巨大な権力を持つ組織に対抗しようとするとゲリラ的な戦法しかない。危険な目にあわせたくないからと、妻から秘密を打ち明けられなかった夫。妻に頼られない夫。その悲しさはジャスティンが最後まで一人で戦いぬいたことから明らかだろう。

■ストーリー

それは、しばしの別れのはずだった。英国外務省一等書記官のジャスティンは、ナイロビの空港からロキへ旅立つ妻テッサを見送った。ジャスティンに事件を報せたのは、高等弁務官事務所所長で、友人でもあるサンディだった。テッサは車で出かけたトゥルカナ湖の南端で殺された。彼女は黒人医師アーノルドと共に、スラムの医療施設を改善する救援活動に励んでいた。今回もその一環のはずだったが、同行したアーノルドは行方不明、警察はよくある殺人事件として事件を処理しようとする…。

■感想
前半のジャスティンと後半のジャスティンは明らかに別人だ。前半は妻の浮気を疑い、自分の趣味に生きるような男だったが、後半からは亡き妻の意思を引き継ぎ、一人で巨大な組織に対して戦いを挑んでいく。普通に考えればジャスティンの行動は無謀なことだが、ジャスティンをそこまで駆り立てたのは妻の愛に気づいたからというのはもちろんのこと、自分の不甲斐なさを払拭したいからだろう。同じ男としてジャスティンの苦しみは痛いほどよくわかった。

ジャスティンの孤軍奮闘と共に恐ろしさを感じたのは、アフリカという地では何でもありなのかということだ。先進国にいいようにもてあそばる発展途上国。その図式がここでも浮き彫りになっている。発展途上国では金こそすべて、金さえあればどんなことでもできてしまう。皮肉にもジャスティンが頑張れば頑張るほど、アフリカに住む黒人達との温度差というものを感じてしまった。

一人戦うジャスティンには、テッサと生活していた時のジャスティンにないものがあった。それはテッサと同じように、今自分が助けることができることをやろうという心。村が襲われた時、ジャスティンは無駄だとわかっていながら黒人の子供を助けようとした。そんな子供は沢山いると無視していたあの頃との変化。

本作はジャスティンの変化を見る物語なのかもしれない。



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