モンゴル


2008.6.11 いたって普通なテムジン 【モンゴル】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
モンゴル帝国の建国者であるテムジン。そのテムジンの幼少時代から青年期までを描いた本作。ただ、本作の描き方は力強いテムジンというよりも、弱さを前面に押し出した一人の人間としてのテムジンを描いている。巨大帝国の建国者とは思えないほど、普通なテムジン。妻であるボルテと平穏に暮らすことだけを願いとし、妻を取り戻すために戦いに挑む。野心のかけらも無いテムジンを本作は描いている。特別なカリスマ性を感じることもなく、ただ一人の戦士としてのテムジンを見ていると、一人の人間としてしっかり感情移入できたような気がした。浅野忠信が好演することにより、やさしさが1.5倍増ししたような気もする。

■ストーリー

12世紀、部族間の争いが絶えないモンゴルで、小部族を率いるイェスゲイの息子テムジンは9歳にして未来の花嫁ボルテと将来を約束する。が、その矢先、他部族に父を毒殺されてしまう。後ろ盾を失い、かつての父の部下にも裏切られ逃亡生活を余儀なくされるが、少年ジャムカに救われ2人は兄弟の誓いを立てる。やがて成人したテムジンはボルテを妻に迎えるが、喜びも束の間、仇敵メルキト族に略奪されてしまう。

■感想
少年時代から青年時代、そしてモンゴル帝国を築くまでのテムジン。チンギス・ハーンとしての方が有名だが、本作ではあきらかにテムジンといった方がよいのだろう。巨大帝国の建国者たるオーラのようなものはほとんどない青年時代。どちらかといえば、権力には興味がないが、周りに慕われ、自然と長(おさ)になったような感じだろうか。テムジンの少年時代から青年時代にかけての心優しい心情を浅野忠信が好演している。

テムジンと共に、本作の中で光っているのが妻のボルテである。囚われの身となったとしても、テムジンのことを忘れることなく、最後にはテムジンの元に戻ってくる。それに答えるようにテムジンはボルテのお腹の中に他の男の子供がいたとしても、変わらず愛し続ける。二人の関係はすでに愛を超えた何か運命的なもので繋がっているのだろうと思わせる流れだ。テムジンが強烈なカリスマ性があるわけでもなく、ただ一人の戦士として描かれているのも好感がもてる要因なのだろう。

本作の中で印象深い場面として、本人が望めば自分の長(おさ)は自分で選べるという部分だ。たとえ今まで世話になった長であっても、より魅力的な長が現れれば、突然別の長についていくということもありだという部分。離れられた長の立場、そして、自然と自分の周りに人が集まるテムジン。対照的な二人だが、最終決戦であいまみれることとなる。テムジンにカリスマ性は感じないが、やさしさというのは表情としぐさからヒシヒシと感じることができる。

荒々しさを排除したテムジンというのは、こうも落ち着いた表現ができるのかと驚かされた。



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