殯(もがり)の森


2007.10.14 ドキュメンタリー的? 【殯(もがり)の森】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
ある映画祭でグランプリを受賞した本作。どれほどのモノかと、かなり期待していたが、予想通り特殊な作品だった。まったくといっていいほど音楽のない無音な世界。そこには自然の音と生活の音しかない。映像的には緑豊かな田舎がすばらしく表現されていると思う。しかし、内容的には日曜日の昼にやっているドキュメンタリーを見ているような気持ちになってしまった。介護スタッフの苦悩と、介護されるがわの軋轢を描く良質なドキュメンタリーなのだろうか。本作が商業映画としてどの程度の評価を得ているのかわからないが、映画としての面白さはあまり感じなかった。

■ストーリー

妻を亡くし、山間部のグループホームで介護スタッフとともに共同生活を送るしげき(うだしげき)。そこに、新しく介護福祉士としてやってきた真千子(尾野真千子)。彼女もまた、つらい思いを抱えていた。日々の生活の中で、2人は次第に打ち解け合っていくのだったが……。

■感想
権威主義ではないので、特別賞をとったからといって無条件で賞賛するつもりはない。カンヌ国際映画祭、審査員特別賞を受賞という実績がさんさんと輝いているが、それが内容にプラスになることはない。予想通り、非常に難解な作品となっている。ストーリー的なものはあって無いようなもので、淡々と介護スタッフと被介護者の交流を描いているように感じた。

全体的に自然の美しさを存分に表現している。ヒグラシの鳴く声を聴きながら緑一杯の茶畑を歩くシーンは、田舎独特の緑の匂いが画面からにじみ出ているような、そんな錯覚さえ覚えてしまう。映像の美しさを強調するためなのか、ほとんどバックグラウンドで音楽が流れることはない。森の音や小川のせせらぎ。何を話しているか判別不能なほど、小声でざわざわとした生活音。それらすべてが相まってリアルなドキュメンタリーと感じさせる要因なのだろう。

見終わった後には、映画を見たという感想はもたなかった。森の中でのサバイバルシーンのようなものもあったが、まったく映画的な雰囲気を感じなかった。本作で登場する田舎が自分の田舎と、どことなく雰囲気が似ているのでそう思ったのかもしれない。この作品の中に映画としての面白さを見い出すのは難しいと思った。これは勝手な判断だが、商業映画として上映しても、人はそれほど入らないだろう。

ありきたりな映画でないことは確かだ。映画祭でグランプリをとったからとミーハーな気分で見ると、とんでもないことになるだろう。



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