名探偵の呪縛 東野圭吾


2005.8.22 初心忘れるべからず? 【名探偵の呪縛】

                     
■ヒトコト感想
作者である東野圭吾自信が何か戒め的な意味合いも含めて本作を書いたのだろうか?
昔に比べて明らかに本格推理を書かなくなった作者が初心を忘れない為に
物語のいち登場人物として登場し、
本格推理を懐かしんでいるような印象をうけた

中身は純粋なミステリーがいくつかあるだけで、そこはオマケのようなものだ。
本作は作者の本格推理への気持ちをどう受け取るかにかかっていると思う。

■ストーリー
図書館を訪れた「私」は、いつの間にか別世界に迷い込み、探偵天下一になっていた。
次々起こる怪事件。だが何かがおかしい。
じつはそこは、「本格推理」という概念の存在しない街だったのだ。
この街を作った者の正体は?そして街にかけられた呪いとは何なのか・・・。

■感想
導入部分から何か今までの作品と違う雰囲気を醸し出していた、図書館で迷った主人公は
女の子を見つけ、そこからミステリーが存在しない不思議な世界へ紛れ込んでしまう。
流れ的に非情に不自然であり、リアリティはないのだがそれは最初に図書館で迷ったあたり
からなんとなく覚悟はしていたのでそれほど衝撃ではない。
たとえこれからしゃべるうさぎが出てこようが、鼻の長い木の人形が出てこようが
驚かなかっただろう。

この世界を作ったクリエイターという、住人から崇められている人物が銅像として
出てくるのだが、この辺から「ははぁーん、その手でくるのかー?」と
半分本作の確信部分が分かってしまった。
しかし、そこは分からないフリをして読むのがミステリーを読む上での正しい読み方
なんだろう。
一種のパラレルワールド的なもので、クリエイターが誰であるかもある程度想像はできた。
恐らく本作を読んだ人はほとんど僕と同じように、容易に想像できたことだろう。

ミステリーが存在しない以外は特別不思議ではない世界で、様々な事件が巻き起こり
それを解決していく探偵天下一。事件は古典的なトリックであり、その謎が解かれたから
といって特別感動したり、スッキリしたりはしない。
このへんの事件を含めトリックはすべて最後のオチに持っていくための前フリにすぎなかった。

作品の中で主人公が現在の作品には社会性とリアリティが必要不可欠
と言っているが作者である東野圭吾はまさしくそれを実践していると思う。
しかし、あえてそれとは対極にあたるような本作を書いたのは、初期の本格推理への
気持ちを忘れない為に書いたのだろうか?
その後、東野圭吾が本格推理に力を入れたかとどうかはわからないが・・・。




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