マタドール


 2008.1.17  哀愁ただよう殺し屋 【マタドール】  

                     

評価:3

■ヒトコト感想
殺し屋というのは常に孤高な存在で、家族もなければ友人もいない。あるのはビジネス上の付き合いだけ。しかし、そんな殺し屋も一人の人間なので、歳をとれば寂しくもなり、人恋しくもなる。そんな中年殺し屋の心をピアース・ブロスナンが好演している。ピアース・ブロスナンといえば、どうして007のような華やかな印象を思い浮かべるが、しょぼくれた中年男も華やかな世界からの転落のようで、いい味をだしている。どんな殺し屋でも歳をとれば落ち着いてくるのだということを、ユーモアを交えながら描いている。なんだか、友達ができなくて寂しがっている転校生のようにも見えた。

■ストーリー

プロの殺し屋として長年のキャリアを持つジュリアン(ピアース・ブロスナン)は、そろそろ中年にさしかかり仕事も人生もスランプ気味。メキシコでの仕事を終えた誕生日の夜、気軽に電話をかける友人もいないジュリアンはホテルのバーに向かい、そこで平凡なサラリーマンのダニー(グレッグ・キニア)と出会う。翌日、ダニーを闘牛場に誘ったジュリアンは自分の秘密を明かし、やがて二人の間に奇妙な友情が芽生えるのだった・・・。

■感想
ピアース・ブロスナンの落ちぶれた風貌は、哀愁が漂いながらも、長年培った力強さを感じてしまう。孤独な殺し屋、しかし、ふとしたことをきっかけに友達がほしくなる。なんだか、血も涙もない殺し屋にしては、やけに可愛く感じてしまう。転校生がなんとか馴染んで友達を作ろうと必死になるように、ジュリアンはダニーの興味を惹こうとやっきになる。相手の興味を惹くために、嘘をつき、そして時には相手にこびる。なんだか、まったく殺し屋のイメージではないことばかりだ。

ジュリアンとダニーの間にいつの間にか奇妙な友情が生まれるくだりは面白い。最初はなんてことないようだが、結末間近では、そこまでの友情が生まれた経緯はそれなりに納得できるものとなっている。友情が生まれるには、相手に自分の秘密を打ち明ける必要があるという鉄則をジュリアンはしっかり守っている。しかし、すべてがすべて真実かというと、そうではない。ジュリアンとダニーの掛け合いは面白く、特にダニーのキャラクターでジュリアンの哀愁漂う雰囲気を強めている。

一人孤独に任務をこなすはずのジュリアンが、年齢のためか殺し屋という職業に疑問を持ち始め、衰えも見え隠れする。人は歳をとれば弱気にもなる。その時、始めて人の温かみと重要性を感じることができる。ジュリアンの行動は理にかなっており、それを受け入れるダニーもすばらしい。二人がコンビを組めば、おそらく最高なのだろう。それほど、二人の息はぴったり合っていた。

友達をほしがる殺し屋という新しいキャラクターは秀逸だ。



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