魔球 東野圭吾


2005.7.25 天才投手の暗黒面 【魔球】

                     
■ヒトコト感想
孤高の天才投手須田武士、本作の魅力はすべて彼に支えられている。
高校野球を題材にしたミステリーは少ないと思うが、本作は野球に異常なほど
情熱を燃やす須田武士が全ての鍵を握っている。
テーマがテーマなのでありきたりなミステリーになるはずがなく、
癖がある作品だが、キャラクターの魅力に支えられている
残虐な場面もあるが、全ての謎が解けた後には、その理由にうなずけるような
とても説得力のある作品だ。

■ストーリー
9回裏二死満塁、春の選抜高校野球大会、開陽高校のエース須田武志は、
最後に揺れて落ちる"魔球"を投げた。すべてはこの一球に込められていた…。
捕手北岡明は大会後まもなく、愛犬と共に刺殺体で発見された。
野球部の部員たちは疑心暗鬼に駆られた。
高校生活最後の暗転と永遠の純情を描いた青春推理。

■感想
人はここまでひとつの事に集中することができるのだろうか?
須田武士の場合は将来を見据えた上でのことであり、全て先を見越して
行動している。その純粋な気持ちと高い志に心打たれ、非常に
須田武士の志が印象に残っている。

事件の全容は明らかになれば、そんなものかというような感想を持つかもしれないが、
そこに行き着くまでのプロセスはとても純粋すぎる野球への情熱
家族愛によってもたらされているものなのだろう。

須田に起こる、スポーツ選手にとっては一種の宿命のようなものが
ある意味須田武士の人生を終えてしまったと言っても過言ではない。
本作を読むと、かなりに現実離れしているようで、実は須田武士と同じような
境遇の人はいるのかもしれない。自分に置き換えて考えるととても耐えきれるものではなく
家族を守るために須田武士のような決断をすることもできないだろう。

孤高の天才投手である須田武士は現実には存在しないのだが、
もし存在していればとてつもない大投手になっていたことだろう。
本作の魅力は須田武士の魅力を感じることができる人意外は知ることが
できないだろう。



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