魔剣天翔 森博嗣


2005.12.7 タイトルに拘るな 【魔剣天翔】

                     
■ヒトコト感想
魔剣天翔なんてきくと、ゲームかアニメかもしくは分かりやすいファンタジーか。
中身はそんな印象をこっぱ微塵にするほど硬派で王道なミステリーだ。
本作は、ある意味森作品ではすでにおなじみになった密室ものでそれが空中に移動しただけにすぎない。
新しいちょっと悪目なキャラクターも登場し、保呂草とこれからいろいろと
関係ありそうな雰囲気だったのでそれも楽しみだ。
しかし、本作の保呂草はいつにもまして危険なことをしている。

■ストーリー
アクロバット飛行中の2人乗り航空機。高空に浮かぶその完全密室で起こった殺人。
エンジェル・マヌーヴァと呼ばれる宝剣をめぐって、会場を訪れた保呂草(ほろくさ)と
無料招待券につられた阿漕(あこぎ)荘の面々は不可思議な事件に巻き込まれてしまう。
悲劇の宝剣と最高難度の密室トリックの謎を瀬在丸紅子が鮮やかに解き明かす!

■感想
魔剣は結局どのようなものなのか詳しくは語られなかった。
この手の作品だと魔剣が殺人に使われたとか、魔剣にかかわる呪いなどが出てくるかと思ったが
それはまったくない。もしかしたら作者は確信犯だったのだろうか。
あえてみんなが想像するような方向にはもっていかず、別の意味でオーソドックスなミステリーを読ませる。

本作ではいつにもまして保呂草が活躍し、危険極まりないこともやってしまっている。
それを読みながらものすごく心配してしまうのは、普通に考えれば逮捕されるようなことでも
ご都合主義的に主役級の人物はなぜか逮捕されないというようなお決まりパターンはないので
事件にかかわればすぐさま逮捕されるというのは明白だ。

そのあたりの駆け引きを新キャラクターと共に、微妙に味方なのか敵なのかわからない状態というのに
ものすごくしびれてしまった。読みながら本当はそう思っていないのだが、保呂草がこれまでになく
ピンチに陥りあせる場面というのも見てみたい気がする。

結末間近に森作品では珍しくダイイングメッセージがでてくるのだが、
さすがにこれはやりすぎだと思った。
いくらなんでも、そこに行き着くのは無理があるし、紅子がありえないようにすぐに解明するのだが
こじつけという印象と、無くても結末としては十分に成立しているように思えた。
余計なサービス精神が不自然さを生み出してしまっている。



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