まどろみ消去 


2005.10.19 軽く読める短編集 【まどろみ消去】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
森博詞の短編集。やはり短編だけあって物足りなさはあるが、作品はガチガチのミステリーではなく
適度に崩した作品や、読者をミスリードするような作品でバラエティーにとんでいる。
ただし短編の宿命なのだろうが、軽く読める変わりにすぐに内容を忘れてしまう。
特に印象に残っている物だけ覚えているのだが・・・
今回で言うと最後の「キシマ先生の静かな生活」というのはもしかしたら
森博詞自身のことなのかと余計な勘ぐりをしたりもした。

■ストーリー
大学のミステリィ研究会が「ミステリィツアー」を企画した。参加者は、
屋上で踊る三十人のインディアンを目撃する。
現場に行ってみると、そこには誰もいなかった。
屋上への出入り口に立てられた見張りは、何も見なかったと証言するが…。
(「誰もいなくなった」)ほか美しく洗練され、時に冷徹な11の短編集。

■感想
純粋なミステリーとは言えない軽く読める作品がほとんどで、特に何か啓蒙しているわけでもなく
教訓的なものがあるわけでもない。サラリと読めて、
後味がスッキリするのだが印象には残らない
その中でも数少ない印象に残っているものとしてはちょっと毛色の変わったものがやはり
印象に残る。

「やさしい恋人へ僕から」はもしかして自身の体験記なのだろうか??それともただの妄想か?
作中では”スバル氏”の性別も本人の性別も明らかにせず、読者を混乱させ、最後にネタ晴らしをする。
ある程度予想できていたことだが、なんか少し面白かったのが印象に残った。
これはまったくミステリーとは無関係と言って良い。

「誰もいなくなった」はS&Mシリーズを踏襲しているのだが、いつもの理系節はいきを潜め
脇役にスポットを当てたような感じだ。まあある種の外伝的なものなのだろうが
これからシリーズを読み進めていく上で脇役達のキャラクターがより明確になったので
よかったのだろう。

「キシマ先生の静かな生活」ではキシマ先生と犀川がなんとなくキャラクターが被る印象を受けたが
キシマ先生は犀川よりもさらに一歩我が道を行っているようだ。
もしかしたら作者の理想を投影しているのかもしれないが、最後は唐突に悲しい結末となり
その理由もプロセスも語られないのはもしかしたら
作者の周りに存在する人物をモデルにしたからだろうか?

短編集なので恐らく記憶の片隅にギリギリ残る程度のものだろうが、軽く読め、S&Mシリーズの
中休み的なものとして読んでみてほしい。



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