ラブ&ポップ 


 2008.7.26  その時、その時代ならでは 【ラブ&ポップ】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
強烈に時代を感じさせる作品。それも、自分が感じることのできない時代ではなく、ほぼ同年代として経験してきた時代を描いているので、ものすごい懐かしさがこみ上げてきた。出てくる小道具の一つ一つや、ラジオから流れてくるちょっとした曲。その時代を経験してきた同年代ならば、かならず見たり聞いた覚えのあるものばかりだ。今となっては別段珍しくもなくなった援助交際。それをリアルに描いているであろう本作。驚きや衝撃はないが、当時としてはもしかしたら画期的だったのかもしれない。どちらかというと、援助交際の衝撃よりも、その時代に対する懐かしさの方が大きかった。これも時代の流れか、ある程度の過激なことにも多少の耐性ができてしまっている。

■ストーリー

高二の裕美は、初めて最後まで付き合う援助交際を決意した。真夏の渋谷で出会った12万8千円のインペリアル・トパーズ。それを見つけた時、心臓のあたりが凍りついたような感じがしたからだ。欲しいものを、今、手に入れるため裕美は伝言ダイヤルにアクセスする…。援助交際を女子高生の側から唯一描き、新しい世代に爆発的な共感を呼んだ衝撃作。

■感想
リアルタイムに援助交際がどうだとか、そのときにはまったく感じなかった。多少メディアで報道されている程度で、自分の周りではまったく関係のないことだと思っていた。当然、本作に登場するような女子高生たちは、ほんの一部であるというのはわかっている。一部を拾い上げて、さも日本全国すべてがそうなっているように見せるのはメディアのお得意な戦法だ。だからといって、ものすごく局所的なことだとも思えない。身近ではないが、それほど遠くも無い。その時のリアルな感想を微かながらに思い出してしまった。

今読むと、別段強烈な印象は受けない。懐かしいものが出てきたりすると、どうしてもノスタルジックな気分に陥るが、やっていることは今では割と普通なことなのかもしれない。もしかしたら、より大人になったためにそう思ってしまうのかもしれないが…。肯定はしないが、特別否定もしない。やりたい奴がやればいいんだという無責任で無関心な大人ぶった回答をするのは簡単なのだろう。そう思っていた時期もあったのは確かだ。ただ、もし、自分の子供がそんな世界にいたとしたら…、なんてことを考えると、本作を読んでいると苦しくなってしまう。

高校生ともなると完全に家庭の事情をわかっている。自分の生活でのコミュニティが家の実状と離れた経済社会であったとしたら、そんな行動をとる子も多いのかもしれない。親の経済状況を考えながら、ねだるものとねだらないものを選んでいる。なんだか悲しくなってくる現実だが、それはあるのだろう。逆に自分がそんなことを考えていたかというと、まったく考えなかった。それは親が裕福だったからだろうか。それとも自分がそのあたりに無関心だったからであろうか。本作に出てくる高校生たちは、なんだか世間に敏感になりすぎたためにこうなってしまったようにも感じられた。

時代的な変化はあるにしても、今も昔もこの手の流れに変わりはないのだろう。



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