くちぶえ番長 重松清


2007.9.4 前向きで元気がでる 【くちぶえ番長】

                     
■ヒトコト感想
作者の作品ではいじめをテーマとしたモノが多い。そして、結末として、いじめがハッピーエンドで終わるということはない。前向きな結末となってはいるが、後味はそれほどよくはない。しかし、本作は小学生向けということもあり、すべてが良い方向に向かい、前向きで元気がでる作品となっている。番長として芯の通った考え方をもつマコト。正義感いっぱいで、好感のもてるキャラクターだ。小学生の中には本作を読んで、考え方が変わるような子もいるのかもしれない。

■ストーリー

小学四年生のツヨシのクラスに、一輪車とくちぶえの上手な女の子、マコトがやってきた。転校早々「わたし、この学校の番長になる!」と宣言したマコトに、みんなはびっくり。でも、小さい頃にお父さんを亡くしたマコトは、誰よりも強く、優しく、友だち思いで、頼りになるやつだったんだ―。サイコーの相棒になったマコトとツヨシが駆けぬけた一年間の、決して忘れられない友情物語。

■感想
小学生向けだからといって侮れない。作者お得意のいじめや、家族関係を描いている。ただ、いつもの複雑でドロドロした陰鬱な雰囲気というのは少ない。やはり小学生が読むということもあって、それほど過激なことは書けないのだろう。いつもの重松清風なものを想像していると、少し物足りないかもしれない。しかし、今までになく、シンプルで、シンプルなだけに前向きな描写が心に響く。

主人公のツヨシとマコトの関係も、この時期ではありがちな女の子主導型である。女の子のほうがなんでも大人びて感じる年頃に、ツヨシの目から見たマコトという番長が小学生目線で描かれている。大人と子どもでは目線が異なるのだろうが、この小学生目線というのが、読むと非常になつかしく、自分が小学生時代のころをかすかに思い出したりもする。

今現在リアルタイムに小学4年生な子どもたちが読む本作。それを読んでいると、大人であっても元気がでて、前向きになることができる。昔的に言うと何でもできる正義のヒーローとは違う、ちょっと捻くれて、でも心優しい便りになる親分というのが一番当てはまっているのだろう。現代っ子的な様相も多少見せてはいるが、都会で受験戦争にまみれた小学生とは少し違った雰囲気を感じる作品だ。




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