黒い家


2007.11.16 普通で異常なのが怖い 【黒い家】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
強烈だ。日本独特のホラーの怖さとはまた別の恐怖が本作にはある。猟奇的殺人や保険金殺人、そして、えたいの知れないものを巧みに表現する本作の演出。どことなく羊たちの沈黙を思い起こさせるような恐怖を感じてしまった。原作のすばらしさや、演出のすばらしさも、もちろんあるのだろうが、一番のポイントは出演者たちの演技だろう。主役の若槻や異常な夫婦。この三人を見た瞬間、もう普通の作品ではないと思ってしまった。目を背けたくなるような残酷なシーンもあるが、終始目が離せない。

■ストーリー

金沢の生命保険会社に勤務する若槻(内野聖陽)。ある日1人の少年の首吊り事件に遭遇し、その両親から日夜保険料の請求を求められるようになる。しかし、調査すればするほど、我が身を傷つけることもいとわない夫、そして心理学的見地から「この人間には心がない」と人に言わしめる妻、その夫婦には謎めいたものが見え隠れする。そして、ついに…。

■感想
衝撃的な場面をもったいぶることなく表現している。子供の首吊りシーンを普通に映像として表現することは、なかなかできないことだろう。極めつけは、異常な夫婦だ。自分を傷つける夫。あのなんとも言えない、不可思議な演技が、見る者の恐怖感を倍増させている。そして、ボーリング好きの妻。一見普通のことを言っているように感じるが、あの目が異常だ。普通の演技をしているのに、裏に隠れた異常性を垣間見せている。演技とわかっていても、恐ろしくなってしまう。

日本的ホラーといえば、リングに代表されるように、直接的ではなく、間接的な恐怖なのだろう。しかし、本作はハリウッド的な、猟奇的な部分での怖さも併せ持っている。廃墟とかした部屋を探索する場面などは、まさに羊たちの沈黙を彷彿とさせる恐怖を滲み出していた。

非日常的な出来事と頭の中では思いながらも、どこか現実的な雰囲気がさらに恐ろしい。どこにでもいる普通の夫婦が、保険金を目的としてありえない行動にでる。心理学を合間にはさみながら、夫婦の異常さを刷り込んでいく。夫のちょっとおかしな行動といい、妻の傲慢な態度といい、どこか現実の犯罪夫婦をにおわせるような部分もある。サブリミナル的に挿入される、FAX紙が打ち出される音も、なんてことないはずだが、恐ろしくて仕方がない。

ジャパニーズホラーとしては、自分の中ではリング以来のヒットかもしれない。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
pakusaou*yahoo.co.jp