こわれゆく世界の中で


2008.1.8 ゆっくりゆっくりと壊れる 【こわれゆく世界の中で】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
タイトルの意味から考えると、段々と壊れていく世界の中で、人はどのように対応し行動するのか、そんな風にも感じられた。家庭に違和感を感じながら、ふとしたきっかけで惹かれる女性に出会う。家庭の問題が一種の呼び水となって、道を踏み外すこともあるのだろう。そんな壊れかけた世界の中で、どうするのか。タイトルの続きは、本作を見て想像してほしいということなのだろう。決してすべて丸くおさまるハッピーエンドではないが、希望の持てる終わり方だというのは間違いないだろう。いったん壊れかけた世界から戻るのは、相当な労力が必要だが、決して戻らないわけではない。見終わると、ホッとした気分になった。

■ストーリー

ロンドンのキングス・クロス再開発地区。そのプロジェクトを担う建築家ウィル(ジュード・ロウ)は、ドキュメンタリー映像作家で美しい恋人のリヴ(ロビン・ライト・ペン)と、彼女の娘ビー(ポピー・ロジャース)と一緒に10年間家族同様に暮らしている。だが、リヴは心の病を抱える娘を持つ罪悪感から、心のどこかでウィルを拒み、距離を保っていた。そんな時、ウィルのオフィスに窃盗事件が起こる。新設したばかりのオフィス内にあったパソコン類一式が全て盗まれていたのだ。数日後の夜、見張りをしていたウィルは、オフィスに侵入しようとする少年の姿に気づき、後を追い、彼が住む共同住宅をつきとめる。そして、少年の身辺を探るうちに、少年の母親でボスニアから戦火を逃れてきた未亡人のアミラ(ジュリエット・ビノシュ)と言葉を交わすようになる。

■感想
それにしてもジュード・ロウは不倫というか、背徳の恋というのが良く似合う。戸惑いながらも、しっかりと欲望の赴くままに行動し、決して嫌悪感を抱かせない。これは本人の見た目と雰囲気のなせる業だろう。心の病を抱える娘をもちならが、恋人との関係に苦悩するウィル。そんな状態ながらもしっかりと仕事をし、セレブな雰囲気を保っている。ジュード・ロウはすでにある種のイメージができあがっており、そのイメージにぴったりはまる役なので、まったく問題はない。逆にはまりすぎており、他が色あせて感じるほどだ。

仕事が順風満帆で、恋人や娘とも仲むつまじく生活する。そんなイメージを周囲に与えながら、完璧な男を演じている。ウィルの内に潜む苦悩というのは、職場の人間では誰も理解することができない。このあたりは、ものすごく現実とリンクしているように感じてしまった。表面上だけでは、すべてをはかれない。気づかれない苦悩というのは、誰にでもある。そして、それを癒すことができる一服の清涼剤が目の前に現れれば、手を出さずにはいられない。不倫を肯定するわけではないが、その気分は良くわかる。

こわれゆく世界。それはすなわちウィルの世界なのだろう。何不自由ない生活が壊れていくさまをリアルタイムに見せられるようで、非常に心苦しくなる。このままでは崩壊するしかないというところでウィルとアミラの心が通いあい、一気に道が開けていく。流れ的には不幸のどん底に落ちていくしかないと思いきや、ひっくり返す。僕の中では
大どんでん返しに思えたが、途中で明確な岐路があるわけではない。しいて言うなら、リヴがウィルとやり直す決断をしたところなのだろうか。

こわれゆく世界を味わうよりも、こわれないのが一番なのだろう。



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