殺し屋シュウ 


2006.11.21 フィッツジェラルドを愛する殺し屋 【殺し屋シュウ】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
普段は平凡な一般人を装いながら依頼があれば殺し屋となる。フィッツジェラルドを愛読するセンチメンタルな殺し屋。これはすでに殺し屋としてイメージするにはありきたりな設定かもしれない。そのありきたりな殺し屋が一風変わった依頼をこなしていく。依頼の中には定番の物や変り種まで多種多様だ。一つ一つが程よい長さでサラリと読めるのも好感がもてる。読んでいるとまるでテレビドラマを見ているような気にさせられる。脚本出身の作家だからだろうか。ドラマ化すればヒットする要素は多分に持ち合わせている作品だと思った。

■ストーリー

人気絶頂のロックシンガー椎名ゆかは、コンサート中お気に入りの曲を歌っている瞬間に自分を撃ち殺してくれと頼む。シュウは彼女の額に照準を定めるのだが…(「シュート・ミー」より)。フィッツジェラルドを愛読するセンチメンタルな殺し屋のもとに転がり込んだ奇妙な7つの依頼

■感想
殺し屋も最初から殺し屋だったわけではない。一人の少年が殺し屋になるまでの過程やそのバックグラウンドからスタートしている。これによって読み手はシュウに感情移入しやすくなり、その後の出来事も臨場感たっぷりに味わうことができる。しかし、ちょっと主人公であるシュウのキャラクターがステレオタイプな殺し屋像で描かれているのがありきたりだが、それでもシュウのターゲットとなる人物達が皆個性豊かなのでそこで差別化が図られている。

依頼ごとに物語が読みやすく区切られている。これはまるでテレビの連続ドラマを見ているような気にさせられる。それがちょうど良い分量で物語の密度もぴったりだった。これは作者がテレビ業界の脚本作家出身だからだろうか。小説としても読みやすく、また映像として頭に思い浮かべやすいのも物語りにのめり込む助けになっている。

一つの依頼に対して多少ひねりがなく正直すぎるような気もしたが、それがシンプルでよい部分でもある。もし一つ一つの依頼をより濃密なものにし、一つの長編としてつくりあげれば本作はシリーズとして随分長続きする作品となっただろう。しかしそれが良いのか今のままが良いのかは判らない。確実に言えるのは本作でも十分楽しめるし、面白さは伝わってくる。ある意味伝統的な殺し屋のイメージを引き継ぎながらも、
現代ッ子な一面をのぞかせるシュウ。このキャラクターがもうこれ以上読めないとなると少しもったいなく感じてしまう。

できるならば映像化が見てみたいものだ。



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