氷の世界 


2006.12.20 シナリオ集初体験 【氷の世界】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
シナリオ集というのを初めて読む。小説とは別物だと考えたほうがいいかもしれない。登場人物に対するキャストが決まっているので人物像を想像する助けになる。さすがにドラマのシナリオだけあって一話の区切りで次につなげる引きの強さは半端ではない。細かな情景描写がないので自分の頭のなかですべての情景を想像しなければならない。基本的にはテレビドラマを見ているように頭の中で俳優達が演技をしている姿を思い浮かべながらその雰囲気を楽しむことができた。基本的にドラマを体験済みの人には読む必要がないものだろう。初のシナリオ体験だったが想像していたよりも楽しむことができた。

■ストーリー

保険調査員の広川英器は、女子高の女教師の死亡事件を調べる中で江木塔子という魔性の女と出会う。彼女は過去五年間で三人の恋人を亡くし、しかも誰もが高額の生命保険に加入していた。広川は真相を探るのだが、次第に彼女に魅せられていく。愛した女は殺人者なのか。そして彼も四番目の被害者になってしまうのか…。

■感想
巻末に書かれているキャストの力は大きいと思う。このキャストがなければ細かな人物描写がないシナリオ集ではキャラクターとしての魅力が半減してしまう。俳優達の演技を思い浮かべながら頭の中に映像を思い浮かべていく。基本的にほとんど頭の中にテレビドラマを作っているのと同じようなことかもしれない。それが不快かというとそうではない。ただ印象的な場面ではドラマならば効果的な演出がされるのだが、ただシナリオを読むだけだと、インパクトに欠ける部分は否めない。

さすがに連続ドラマ用の脚本だけに一話終りの引きの強さは尋常ではない。次がどうなるか気になる思いは強くなる一方だ。ストーリー的にも読者をひきつける題材としては申し分ない。完全にドラマを見ている気分で読めばまったく気にならない部分も、活字として真剣に読み込むと場面描写がほとんどないせいか、うすっぺらい印象しか残らない危険性もある。内容と登場人物は説明できるが、細かなニュアンスと作者の意図はほとんど伝わっていないような気もする。

会話がひたすら続く展開に嫌気がさす人も、もしかしたらいるかもしれない。ドラマでは俳優の演技でカバーする部分もセリフのみではほとんどそのまま字面で受け取ってしまう。本作を読んで感じたのは、想像力があればあるほど作品を楽しむことができる。小説を読むにもある程度必要なことだが、人物意外にほとんど描写がないシナリオでは、まさに読む人の想像力に頼っているところが大きい。

最後は意外性を求めるあまり犯人に説得力がない。強引すぎる印象は否めないがドラマだと自然なのだろうか。ドラマ好きな人や想像力に自信がある人は読んでみると良いだろう。僕はどちらもほどほどなので十分楽しめた。



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