2008.6.8 スタンダードジャズにのせられて 【恋はいつも未知なもの】
評価:3
■ヒトコト感想
ジャズをテーマとした本作。ジャズに疎い者としては、おそらく有名なジャズのタイトルを用いた短編だったとしても特別な印象はない。ただ、ジャズの歌詞を彷彿とさせるような、ちょっとした短編というのは読んでいて心地よかった。全体を通して幻のジャズバーを探すという大きなテーマがあり、それが最後に無事達成される。ただ、幻のジャズバーがとんでもなく奇想天外なものではなかったのが逆によかった。相変わらず登場人物たちは裕福で金や女に困らないキャラクターだが、身近に感じた。ジャズバーなど行ったことはないが、安心できる空間のようにも感じられた。ジャズに疎くても十分楽しめる作品だ。
■ストーリー
女性ボーカルの、麻薬みたいに心休まる歌が流れる幻のジャズバー。世界の大都市のどこかにあるようだが、私はまだ行ったことがない。特別なことが起きないと、その扉は開かないようだが…。グラスを傾けると、幻のバーのスタンダード・ナンバーが聞こえてくる。
■感想
有名なジャズの曲をタイトルとし、その歌詞を彷彿とさせるような悩みを語る男たち。全て男が主人公であり、金や女に不自由しない代わりに、心の奥底には解決できない悩みを抱えている。多種多様な悩みではあるが、金と女に不自由していない男だからこそ感じる悩みなのかもしれない。本作に登場する男たちには共通して心の闇をどのようにして晴らすのか、そして、隙間を埋めようと必死になっているように感じられた。
スタンダードなジャズといわれても、ほとんど知らない。ただ中にはいくつか知っているタイトルがあった。その曲に対して特別な印象もなく、歌詞は全て英語なので、その意味を考えて聞いたことなどなかった。ただ、物語に登場する男たちの悩みと、ジャズのタイトルがやけにしっくりくるなというような印象はもった。もしかしたら、タイトルから感じる雰囲気も物語に加味されているのかもしれない。ジャズのしっとりとした雰囲気が物語全体から漂ってくるようだ。
大人の男の社交場と思っていたジャズバー。しかし、登場人物たちには三十代前半もおり、自分がその場にいてもまぁ、おかしくない年齢だということを自覚させられた。ただ、かっこつけるためや見栄のためだけにジャズバーに行くつもりはないし、敷居が高いというイメージは拭い去れない。本作を読んだことで、ジャズバーの雰囲気に憧れ、自分がもし金や女に不自由しない状態でありながら、どうしようもない悩みを抱えた時にはフラりと通ってしまうかもしれない。
ジャズに対して興味がわいてくるのは確かかもしれない。
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