木を植えた人


2007.3.14 人を奮い立たせる何か 【木を植えた人】

                     
■ヒトコト感想
短い中にも強烈なメッセージ性がある。エルゼアール・ブフィエに対してはボロボロの衣服を身にまとい、赤黒い顔をした一人の寡黙な老人をイメージした。老人の寡黙さの中には強い意志をイメージする人が多いだろう、しかし強い意志よりも一人の人間の力の大きさ。継続することの大切さを感じた。ただ一人の老人が毎日どんぐりを植え続け、それが最後には大きな森になるなどと、いったいだれが想像するだろうか。見返りを求めず、ひたすら人生の使命とも言うべき仕事をまっとうする。短く、何気ない文章の中にも人を奮い立たせる力を感じた。

■ストーリー

たった一人で希望の実を植え続け、荒れ地から森を蘇えらせた孤高の人。ひたすら無私に、しかも何の見返りも求めず、荘厳ともいえるこの仕事を成しとげた老農夫、エルゼアール・ブフィエの高潔な魂が、読む人の胸をうつ。

■感想
人生の生きがいとはなんだろうか。仕事であったり趣味であったり子どもであったり、人それぞれ生きがいというものがあるだろう。それを見出せず、ストレスを抱えながら生活している人もいるだろう。仕事であったり、子どもが生きがいである人はそれを失うこともあるだろう。そうなった時にいったいどうなるのか。生きがいを失った人間は抜け殻のようになるのか。長年連れ添った夫婦の片方が永遠の眠りにつくと、残された方はアルツハイマーになってしまうというのは良く聴く話だ。生きるうえで何が一番重要なのか、その答えが本作にあるような気がした。

荒地から森を蘇らせるという途方も無い仕事をやりとげたエルゼアール・ブフィエ。彼はこの仕事が生きがいだったのだろうか。僕は生きがいではなく、それは呼吸をすることと同じレベルの物のように感じた。呼吸をしなければ死んでしまう。しかし楽しんで呼吸をしているわけではない。それと同じように楽しんで木を植えているのではないだろう。ただ、それが当たり前のことだからやっているのだろう。ちょうど夫婦の関係がお互いがお互いを空気にように感じるのに近いかもしれない。

エルゼアール・ブフィエの域に達することはできないまでも、それに近づくようにはなりたい。呼吸をするように自分のすべきことを淡々とこなせるレベルは、
悟りを開くのと似ているのかもしれない。仕事であれ、なんであれ、強い意志とゆるぎない力、あとは絶え間ない継続性を持てば何か新たな道が開けるのかもしれない。

宗教的な話としても使われそうな作品かもしれない。



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