消えた天使


 2008.5.25  どこかで見たことのある場面 【消えた天使】  

                     

評価:3

■ヒトコト感想
性犯罪登録されている人物を執拗なまでに追い続けるエロル。日本にはない制度で、下手すると人権問題にも発展しかねないデリケートな部分を鋭く描いている本作。題材は新しいとは思うのだが、内容は典型的なミステリーだ。どこかで見たような場面が続き、名作ミステリーを踏襲したような流れ。羊たちの沈黙やセブンを思わせる場面はあちこちに登場する。キャラクターに関しても、エロルの徹底的なまでに性犯罪者を追い求めるその執念の動機付けが弱く。キャラクターとしての魅力にも乏しい。相棒であるアリスンにしても、女性ならではの視点でエロルを糾弾するのかと思いきや…。典型的すぎるミステリーなので、終始退屈な印象を受けた。

■ストーリー

公共保安局のエロルはかつて性犯罪を犯し、性犯罪登録されている人物の監視にあたっていた。ある日、自分の後任のアリスンを連れて、ある登録者のもとを尋ねた彼は、その男の恋人の歯が折れていること気づき、暴力を受けていると気づく。そしてやはり登録者の美容師を尋ねたあと、誘拐事件発生の連絡が入った。彼はこの事件の犯人は、彼が監視している人間の中にいると感じたが…。

■感想
リチャード・ギアがこの手の偏屈な役をやるのは珍しいのではないだろうか。同僚にも嫌われ、一人孤独に生活する男。プライベートな部分がほとんど見えてこないというのも、そのキャラクターの魅力が十分ではない原因なのかもしれない。アリスンという自分の後任がおとずれた際にも、そのことにはほとんど感想を示さずに、ただ、ひたすら性犯罪登録者を監視する。何がそこまでエロルを突き動かすのか。理由らしきものも語られてはいるが、それで全て納得できるほどではない。

ミステリーの王道ともいえる流れ。グロテスクな描写で、犯人に対する異常性をアピールし、エロルの正当性を観衆に示している。ただ、冷静に考えるとエロルの行動はかなり逸脱しており、結果オーライでは済まされない部分もあるように感じてしまう。これをエンターティンメントとして面白さを生み出す部分だというのであれば、受け入れることはできない。エロルを応援することができず、かといってアリスンやその他のキャラクターに感情移入もできない。登場人物すべてが、どこか病んでいるように感じられた。

薄暗い部屋の中で監禁される少女。異常者の本性に触れるものはそこに取り込まれる危険性があるというのを表現しているようだが…。異常者=”羊たちの沈黙”であったり、”セブン”というステレオタイプな雰囲気がある。印象的な場面では、かならずどこかで見たことがある場面だという思いがわいてくる。そして、薄暗い雰囲気はまさにそのまんまだ。なぜ異常者は常に人里離れた薄暗く、汚い部屋で凶行に及ぶのか。わかりやすい面はあるが、あまりに常套手段すぎて、がっかりしてしまう。

典型的ミステリーだが、題材は新しい…のか?どこかで見たことがあるという思うは、決して拭い去れない印象だ。



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