県庁の星


2006.11.11 織田裕二には改革が似合う 【県庁の星】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
織田祐二には改革が似合う。舞台が警察か県庁かの違いだけで根本的には「踊る大捜査線」とほとんど変わらない。そのキャラクターなのか、もしくは演出家が織田祐二に合わせてそうしているのか。どんなにエリート公務員風を装っても、どこか反体制的な香りを隠すことはできない。それが悪いのではなくはまり役であり、これ以上ないほど作品に溶け込んでいる。本作は織田祐二が主演だからこそできた作品であり、他の俳優ではどこかわざとらしいものになっていただろう。時に大げさに、そして熱く語る姿を見ると、多少かゆくなってはくるが、それらを含めてこの「県庁の星」という作品には必要なものだ。一生懸命頑張ることの恥ずかしさというのをすっ飛ばすほどの勢いを持っている。

■ストーリー

K県庁のエリート公務員・野村は、200億円をかけたプロジェクトを踏み台にキャリアの躍進を狙っている。プロジェクトに必要な「県と民間の交流」をクリアするため、半年間の研修に借り出された野村は、三流スーパー「満天堂」に派遣されることに。パート従業員の二宮が野村の教育係になるが、役所のスキルを押し通そうとする野村は、スーパーの現場に馴染めない。その頃県庁では、野村抜きでプロジェクトが動きはじめてしまう。

■感想
織田祐二が改革に取り組むとなると大体パターンは予想がつく。最初のエリート公務員の部分もある程度予想の範囲内だ。そして予想通りに展開するのが心地よくもある。スーパーの従業員との確執や店長、副店長を含めての事なかれ主義。そして公務員として県民の税金を使いたいほうだいの贅沢三昧。それら全ては何かしらの解決なり結果を出すのは予想できるが、そこまでのプロセスを織田祐二が演じることにより楽しさがわいてくる。これほど改革が似合う男も珍しいだろう。

パート従業員である二宮との微妙な関係。結局最後まで県庁さんと呼ばれ、ロマンスが生まれるかどうか微妙な雰囲気だった。織田祐二に欠点があるとしたら唯一はラブロマンスをあまり感じないということだ。いい感じな雰囲気がわいてこないというのか何か仕事や改革に熱を燃やすあまり、周りのことには目もくれる暇がない。柴崎が演じる役もそれほどロマンスを感じさせる役ではないというのもあるが、終始改革のみに目がいってしまう。

三流スーパーを改革する。苦労しながらもそれを成し遂げ県庁へ帰っていく。それが王道なのだが、本作はその後の展開まで意外性をもって描かれている。県庁の官僚主義をあからさまに否定し、昨今の事件にも何かしら影響を与えるような描写さえある。後半は非常に社会派な作品として描かれている。そしてさらにご都合主義で全てがうまくいくわけではなく、改革は難しいという締めくくりまでついている。
最後がやけに現実的だったのが印象に残っている。

織田祐二が演じると何でも熱く、そして何かを変えたくなってくる。スーパーの店員でなくとも、何かを始めたい気持ちになる。反体制的な人は煽られて何か行動してしまうだろう。それほど熱い作品だ。



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