2007.3.7 社会の教科書的 【憲法九条を世界遺産に】
■ヒトコト感想
テーマが難しそうだが、爆笑問題の太田が絡んでいるのでそれなりに読みやすいものになっているかと思った。確かに太田の話はそれなりにわかりやすかった。しかし本作の大半を占めている中沢新一の話はわかりにくいことこの上ない。テーマがそれなりに難しいのと宮沢賢治を持ち出したり、その他小難しい引用を利用したり。正直理解はできるがそれを面白いとは感じなかった。なんとなく社会の教科書を読んでいるような気にもなった。相手にできるだけわかりやすく伝えるかというのは難しいのはわかるが、太田と比べてしまうと、中沢新一の話はどうしても読みにくさは否めなかった。
■ストーリー
実に、日本国憲法とは、一瞬の奇蹟であった。それは無邪気なまでに理想社会の具現を目指したアメリカ人と、敗戦からようやく立ち上がり二度と戦争を起こすまいと固く決意した日本人との、奇蹟の合作というべきものだったのだ。しかし今、日本国憲法、特に九条は次第にその輝きを奪われつつあるように見える。この奇蹟をいかにして遺すべきか、いかにして次世代に伝えていくべきか。お笑い芸人の意地にかけて、芸の中でそれを表現しようとする太田と、その方法論を歴史から引き出そうとする中沢の、稀に見る熱い対論。宮沢賢治を手がかりに交わされた二人の議論の行き着く先は…。
■感想
憲法九条が理想論で世界遺産にするほど貴重なものだという話。ある面ではそうかもしれないし、そうではないかもしれない。結局は普通に行われている論争に太田の考えが付け加えられただけだ。それに便乗するように中沢新一が独自の理論を展開している。小難しい話をしているが、正直ほとんど読んでいて面白いとは思わなかった。ただこういうもんだと説明され、それはこんな理由があるからだ。そしてこういう考えもあるかもね。という自分の知識をひけらかしているだけのような気もした。
それに比べると太田の文章は身近に感じることができた。この違いは何なのか。文化人は一般人のことを考えず難しい専門用語を使う傾向にある。本作でいうと別に中沢新一が難しい専門用語を使っているとは思わない(一部にはもっと簡単に言えるだろうと思う部分はあった)。それを抜きにしても、何かを説明するときにその喩えが太田であれば身近でわかりやすいものだが、中沢は小難しい文献を例にだしている。この違いはとても大きく感じた。
冒頭から宮沢賢治を出されると、正直この時点でなんだか置いていかれた気分だった。宮沢賢治の名前は知っているがそれほど思い入れもなく、知識もない。戦争にどうゆう関わり方をしていたのか、誰を支持していたのか。すでに話を始めるベースでひらきがあったので、まず最初から違和感を感じてしまった。もちろんすべてがすべて違和感だらけなわけではない。ただし、本当に二人が言いたかったことを理解するには、まず宮沢賢治を詳しく知っていなければならないだろう。
今の若者がどれだけ憲法九条の意味をわかっているのか。おそらく微妙だろう。そんな中で本作を読むことで、その裾野を広げることができるのであればそれだけで本作の価値はあるのだろう。
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