刑務所の中


2005.2.3 パズルで懲罰房 【刑務所の中】

                     

評価:3

過去に本作の原作である漫画をさらっと読んだことがある。
その時の印象は絵がごちゃごちゃしているが
どこか魅力的な雰囲気だなーというのを感じていた。
その漫画が原作となり映画が始まるということで前から気になっていた作品を見た。

普通に生活していては見ることができないものを見てみたい、
覗いてみたいという衝動は誰にでもあると思う。
刑務所の中の生活という犯罪を犯して服役するか、刑務官にならなければ見ることができない世界を
覗かせてくれる。

非常に興味深く面白い作品だ。

銃刀法違反でつかまった漫画家である花輪が実際に自分が体験したことを
淡々と漫画として描きそれを映画化したものである。

刑務所といえば誰も良いイメージは持たない、暴力刑務官や陰湿ないじめ、牢名主(ろうなぬし)、
果ては男色など世間一般の暗いイメージを本作は払拭してくれる。
表現しているのは受刑者達の規則正しい生活と食事風景がメインである。
その中にほのぼのとした笑いがあり、懲罰房に入れられる下りでもそれほど悲壮感は感じさせず、
楽しんでいるような雰囲気でもある。

「パズルで懲罰房行きである」という言葉に特に笑えた。
本のクロスワードパズルに直接書き込んだ為に懲罰房行きなのだ、
ノートに書き写してやれば良かったらしい(笑)

本作では特に食事シーンに力が入っているような気がする、
恐らく受刑者にとっての楽しみは食なので、自然と作者である花輪の目も食事に集中しがちとなり
それが映画にも反映されたという形ではないだろうか。
出てくるメニューはたいした物ではないのだが正月メニューなどはちょっと食べたくなるような
気がするほどおいしそうに表現されている。

中学生の時に林間学校というのがあり生徒全員で泊まりという授業があったが、
そこでシーツの畳み方、ラベルの向きなど細かく指導されてとてもめんどくさいと思ったことがあったが、
この受刑者達の几帳面さというのにはホントに僕がやっていたことの非ではなく
ものすごい執念のような物を感じた。
それは恐らく強制的にやらされているはずだが、
本作では皆自然に楽しんでやっているようにも見えてくる。

いじめも何もないホノボノとした生活、食事はうまいし、自由時間もたっぷりある、
ともすれば本作を見て
刑務所に入りたがる人もいるかもしれない。
本来なら犯罪を犯し収監された犯罪者達は皆どこか暗さや危うさを持っているはずだが、
そんなものは微塵も感じさせない明るさである。

本作は見ているものに訴えるテーマ的な物はなにもない、
ただ淡々と日々の生活が流れていくだけである。
気が付いたら終わっていたという表現が当てはまる作品かもしれない。



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