活動写真の女 


2007.5.30 実は青春恋愛モノ 【活動写真の女】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
昭和の時代、そして撮影所。頭に浮かぶ映像は着物を着た美しい女性がたたずむ姿。なんだか本作を読んで最初に思い出しのは、リングの監督として有名な中田秀夫が作成した「女優霊」だ。全体の雰囲気も撮影所が舞台ということで似通っており、美しい女優ということでその時の映像がフラッシュバックしてきた。美しい女優の霊という恐怖感はあるのだが、ちょっとした青春物語にも思わせるほどさわやかな一面も持ち合わせている。よく考えると良く分からない物語かもしれない。

■ストーリー

昭和四十四年、京都。大学の新入生で、大の日本映画ファンの「僕」は友人の清家忠昭の紹介で、古き良き映画の都・太秦の撮影所でアルバイトをすることになった。そんなある日、清家は撮影現場で絶世の美女と出会い、激しい恋に落ちる。しかし、彼女は三十年も前に死んだ大部屋女優だった―。

■感想
平凡な大学生である「僕」が経験する奇妙な出来事。ただその奇妙な出来事がメインではない。大学生活ではある意味あたりまえの日常である恋やバイト。ただそこに少し奇妙な清家忠昭と美しい女優の霊が登場するので変わった雰囲気となっている。しかし、ベースは昭和の青春物語で「僕」の目から見た映画の世界が語られている。

ところどころに登場する映画の薀蓄。昭和の映画に興味がある人ならばいいのだが、あまり興味がない人にはつらい部分かもしれない。この時代の映画制作がどうであったかとか、どれほど活気があり、そして没落していったか。その時代を経験していない者にとっては驚かされる部分も沢山ある。このことが物語自体を濃密なものにすることに一役買っている。

女優の霊に取り付かれた清家。最後の結末を考えると
純粋なホラーなのかもしれない。ただ見方を変えると、青春の一場面として恋もすれば失恋もする。どんなに真面目で厳しい家庭に育った人間であっても恋に溺れ、そして愛する人とずっと一緒にいたいと思う。その相手がすでにこの世にいないだけで、雰囲気的には恋に悩み、心中の道を選んだようにも感じられた。

恋愛や青春物語を含んでいるが、昭和初期から中期の映画ファンにはたまらない作品だろう。



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