霞町物語 


2007.5.23 ほんの少しうらやましい 【霞町物語】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
今では西麻布と名前を変えた霞町。都心のど真ん中で生活する主人公たちの青春時代をホロリとくるエピソードを盛り込みながら描いている。時代的なことと、主人公たちの生活レベルが高い、俗に言うおぼっちゃまだということもあり、今では信じられないほど高校生らしからぬ生活をしているような気がした。自分の車に乗り回し酒を飲み、ディスコへくりだす。不良というわけでもなく有名私大へ進学するほどの頭も持ち合わせている。まったく重なる部分がない青春時代だが、それでも無性に身近なことのように感じられたのはなぜだろうか。

■ストーリー

青山と麻布と六本木の台地に挟まれた谷間には、夜が更けるほどにみずみずしい霧が湧く。そこが僕らの故郷、霞町だ。あのころ僕らは大学受験を控えた高校生で、それでも恋に遊びにと、この町で輝かしい人生を精一杯生きていた。

■感想
写真屋の一人息子。自由気ままな高校生活がこれでもかと表現されている。今の時代であれば多少分かる気がするが、この時代からこれほど自由気ままな生活が送れたというのは非常に恵まれている。そして、それがやけにうらやましく感じてしまった。霞町という都心のど真ん中に生まれたという地の利はあるにしても、こうまで楽しい高校生活があるのだろうかと思えてしかたがなかった。

幾つかの短編で構成されている本作。それぞれの中にはかならずホロリとさせるような要素が付け加えられている。時には自分の同級生の話であったり、親の話であったり。荒唐無稽で突飛な話ではなく、割と当たり前に考え付くような話なのだが、その文章一つ一つが心に染み入るように奥底に残るのは作者の筆力のなせる業だろう。

どんなに遊び歩いても締める部分はきっちりと締め、最終的には立派な大人になっている(何が立派かわからないが…)本作の登場人物ほど自由気ままな高校生活を経験していない者としては、高校時代に遊び歩いた者はその後もそれなりの生活を送っていてほしいというのが本音としてある。しかし、本作のような場合はその考えもふき飛んでしまった。

ある意味
憧れるような高校生活だ。



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