顔 FACE 横山秀夫


2007.4.6 男性社会の極みである警察 【顔 FACE】

                     
■ヒトコト感想
典型的な男社会である警察組織。似顔絵婦警という仕事とその役割。また男社会での生きにくさなど、メディアに露出する部分では伺いしれない部分をクローズアップし難解な事件を解決していく。単純に名探偵役を似顔絵婦警がやるのではなく、失敗もしながら難解な事件を読者と同じ目線で語ってくれる。特別複雑なトリックやミステリーにありがちなご都合主義があるわけではない。事件に関わる人々の心の葛藤を描くように事件の本質を表現している。主人公が女性ということで、硬派で堅くがちがちな雰囲気になるところを、うまく和らげている。

■ストーリー

「だから女は使えねぇ!」鑑識課長の一言に傷つきながら、ひたむきに己の職務に忠実に立ち向かう似顔絵婦警・平野瑞穂。瑞穂が描くのは、犯罪者の心の闇。追い詰めるのは「顔なき犯人」。

■感想
顔なき犯人を追いかける似顔絵婦警。いくつかの短編で構成されている本作はすべてに似顔絵が重要な位置を占めているわけではない。物語の端々には似顔絵婦警としての動きはでてくるのだが、事件解決に直接役立ったり、事件に大きな影響を与えるものではない。ただし似顔絵婦警としてその能力である人を見る力というものが事件に大きな影響を与えている。普段なじみはないが、あるとき突然登場する犯人の似顔絵。

似顔絵と共に、もう一つ本作のテーマとなっているのは女ということだ。警察組織の中でどのように扱われるか。一昔前の男社会を思わせるような相変わらずの男尊女卑。事件と巧妙に絡めながら、強く批判しているのではなく、客観的に淡々とその状況を描写しているように感じた。ものすごく個人的だが著者近影の顔からすると男社会にどっぷりと浸かっているような感じだが、実際には警察組織における女の立場というものを敏感に感じ取っていたのだろう。

似顔絵婦警という仕事が存在すること自体に驚いた。本作は似顔絵”婦警”となっているが、別に婦警に限らないはずだ。それをあえて婦警にしているのが本作の警察組織に対する挑戦のようなものを感じた。

似顔絵婦警が何でもかんでもスーパーマン的に事件を解決する名探偵ではないのが好感がもてる。




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