2007.3.19 感想が書きづらいことこの上ない 【カンガルー日和】
評価:3
■ヒトコト感想
作者があとがきで語っているように脈略のない超短編が多数収録されている。脈略がなければ統一性もない。細かすぎてほとんど概要しか覚えていない。その中でも特別にやりと笑えるようなユーモア溢れる作品としては「4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて」だけだ。その他の作品との対比という意味では明らかに一つだけ突出しているようにも感じた。中身はなんてことないのかもしれないが、想像力を豊かにすれば楽しめる。どこかで口説き文句としても使えるかもしれない。
■ストーリー
時間が作り出し、いつか時間が流し去っていく淡い哀しみと虚しさ。都会の片隅のささやかなメルヘンを、知的センチメンタリズムと繊細なまなざしで拾い上げるハルキ・ワールド。ここに収められた18のショート・ストーリーは、佐々木マキの素敵な絵と溶けあい、奇妙なやさしさで読む人を包みこむ。
■感想
一つ一つがとても短い。大体どれもが10分で読み終わってしまう。短いだけに心に強く残るものではない。細かなストーリーが語られるわけでもなく、不思議な雰囲気のなかなんだかよくわからないうちにいつの間にか終わっている。そんな感じかもしれない。そんな中でも印象に残っているのは「4月のある~」だ。これは単純に女の子を口説く話と言われればそうかもしれない。しかし、そのプロセスがなんともいえず楽しい。もしかしたら実際にこの手を使って女の子を口説くことができるのかもしれない。そんなことを思ってしまった。
最後の「図書館奇譚」だけはそれなりの長さとなっている。そしてこれは作者お得意の羊物である。ある程度予想はついたが、作者の作品を読んでいるとあちこちで登場する羊男。この正体は未だに不明だが、そんなことは一切関係ないのだろう。この羊男関係の物語としてはまだ分かりやすい部類に入るのかもしれない。相変わらず人をばっさりと突き放すような終わり方なのはいつものことだが。
超短編が多数あり、中には突然掘り出し物的な作品に当たることがある。しかし大多数は読み終わっても特に心に残ることがない、普通の作品のように感じた。そして作者の作品全般に言えることだが、きわめて感想を書きづらい。ストーリーを説明するのも難しく、それを読んでどう思ったかを書くのもかなり難しい。何も感想がないというのは嘘になるが、出てくる言葉は必ず”不思議な世界”という一言で終わってしまう。
もしかしたら、ファンにはたまらないのかもしれないが、自分にはあまり理解できなかった。
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