回廊亭殺人事件 東野圭吾


2006.2.8 執念の復讐劇 【回廊亭殺人事件】

                     
■ヒトコト感想
三十代の女性が老婆に変装し復讐の為に恐ろしい計画を実行していく・・・。老婆に変装するということ自体に驚きはないのだが、そこにいたるまでの説得力を感じることができなかった。回廊亭といういかにも何かありそうな造りの老舗旅館で殺人事件が起こる。この設定ならば火曜サスペンスでそのままできそうな気がするのだが、老婆に変装するというのが映像ではちょっと無理がありそうだし、最後のトリックも映像化には不向きだ。しかし雰囲気は火曜サスペンスだ

■ストーリー

一代で財を成した一ケ原高顕が死んだ。妻子を持たない高顕の莫大な財産の相続にあたり、彼の遺言状が一族の前で公開されることになった。公開場所は旅館"回廊亭"。一族の他には、菊代という老婆が招待されていた。だが、菊代の真の目的は、半年前に回廊亭で起きた心中事件の真相を探ることだった…。その夜、第一の殺人が。

■感想
さらっと読める上質なミステリーだろう。30代の女が老婆に変装するという部分が多少変化がるのだがそれ以外は普通のミステリーなのだろう。この手の作品では主役である女は美女であることが大前提のように思われるが今回は世間一般でいうところの不細工が主役である。

事件の発端が遺産をめぐった争いということと、恋人を殺された復讐心が交錯し、登場人物達が巧みなミスリードを行い読んでいるものを混乱させている。回廊亭という一風変わった建物の中で巻き起こる事件なので、どれだけ回廊亭が活躍するのかというと、思ったほど重要ではないように感じた。

固定された登場人物達の中、閉じられた世界の出来事なので、人間関係がとても重要になってくる。遺産分配を狙ってきている者達なので、ぎすぎすした雰囲気なのは当然だろう。主人公目線で物語が進んでいるので、復讐心あふれる主人公の心情からか、終始暗い雰囲気になっている。

笑いも、ほのぼのも何もなく。ひたすら復讐にまい進する姿には圧倒され。最後までその暗い雰囲気を保ちながら、最後の終わり方はまさしく全てを擲ってでも復讐を達成するという執念を感じた。




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