陰日向に咲く


 2008.5.5  微妙な駄目人間具合 【陰日向に咲く】  

                     

評価:3

■ヒトコト感想
原作は未読。ただ、ある程度の事前情報を仕入れたところ、複数の話が入り混じるタイプということでかなり期待していた。パルプフィクションやスナッチなどその手の作品が好きな自分にとっては、期待せずにはいられないはずだったのだが…。集中して見ることができなかった。一つ一つのエピソードにそれほど魅力を感じることがないまま前半が流れ、自然につながりが理解できたころには、物語は架橋に差し掛かっていた。どことなく駄目な人々ばかり集めて哀愁を漂わせているようで、泣ける部分があるのは確かだ。ただ、すっきりした感覚はない。なんだか全てがモヤモヤして消化不良のまま終わってしまったような感じだろうか。恐らく原作を読んでいれば、また違った感想をもったのかもしれない。

■ストーリー

ギャンブル好きが高じて借金まみれになったシンヤ。上司から援助を受けるも、パチンコで使い果たしてしまった。会社から見放され、取り立てに追われるシンヤは、オレオレ詐欺で金を稼ごうとする。しかし、電話に出た老婆がシンヤを自分の息子と思い込んで話し始め、二人の間に奇妙な交流が始まる。悲しく優しい老婆の声にシンヤはカネをせびるのも忘れ…。

■感想
主役であるシンヤのエピソードは確かに見ごたえがあり、感動もできる。ただ、そこに絡む人物の話が、お涙頂戴を狙いすぎているのか、はたまた家族愛を前面に押し出しすぎているのか、どうにも覚めた目で眺めてしまった。しっかりと作りこまれているというのは良くわかるのだが、共感できない部分が多かったのでそう感じるのかもしれない。愛すべき駄目人間たちなのだが、駄目具合が微妙なのと、それほど絶望的ではないというのが、メリハリがないと感じてしまうのだろうか。

あるエピソードの中心人物が実は別のエピソードのキーマンとなっている。そのパターンの繰り返しなのだが、多少の驚きはあるにしても、ただ、それだけだ。そこに至るまでにいくつか伏線が張られてはいるがうまさは感じない。物語のつながりに絶妙なうまさを感じることができれば、それだけで釘付けになってしまう。いや、うまさがなくとも、スムーズに繋がれば、間違いなく目は釘付けになっているはずだ。

恐らく原作を読めば面白いのだろう。シンヤのエピソードにしてもありきたりといえばありきたりだが、電話口での会話など、泣ける場面は沢山ある。ただ、映画作品全体としてみると、いったいどこが山場でどこが谷間なのか、そして、どこに一番のクライマックスが訪れるのか。それらが全てばらけてしまい、抑揚がなく、限りなく平坦に近いように感じてしまったからだろうか。もしくは、飛行機の中という特殊な環境で見たせいだろうか。悪くは無いと思うが、集中して楽しむことができなかった。

原作は面白いのだろう。そして、原作を先に読んでいれば、恐らく面白いと感じていたことだろう。見る順番に失敗したというところだろうか。



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