ジュノ


2008.7.2 目からうろこの里親制度 【ジュノ】 HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
事態はシリアスなのに、物語の雰囲気はなんとなく明るい。一度ハメをはずしただけで、取り返しのつかない事態に陥ったジュノ。普通ならば悩みに悩みつくすはずなのだが、やけにあっけらかんと明るい表情に終始している。自分が妊娠したという事実をしっかりと受け止め、そしてその先を見据える行動。里親制度というのがあることも知らなかったが、そこに行き着くあたりがすばらしい。バカっぽく振舞ってはいるが、ひねりのきいた会話や、個性豊かで暖かい周りの人々。誰一人として反吐のでるような悪人は存在しない。みなジュノのことを思って心温まる言葉を語りかける。なんだか、この妙な明るさと前向きな雰囲気はとても良い。同じような悩みをもつ女子高生にはぜひ見てほしい作品だ。

■ストーリー

16歳のジュノは、バンド仲間のポーリーと興味本位でしたたった一回のセックスで妊娠してしまう。高校生が子供を育てられるわけがなく、ジュノは親友リアに「中絶するつもり」と報告するが、中絶反対運動中の同級生に「赤ちゃんにはもう爪も生えているわよ」と言われ、産む決心をする。フリーペーパーで子供を欲しがっている理想的な若夫婦を見つけ、里子に出す契約を交わしたジュノは、大きなお腹を抱えて通学する生活を始める。

■感想
一度の過ちで取り返しの付かない事態に陥る。失意のどん底で、下手すれば自殺を考えるほど強烈な出来事のはずだが、ジュノはあっさりと結論を出す。なんだか、最初のくだりで妙に涙が出そうになった。ポップな雰囲気でごまかしてはいるが、普通ならば悩みに悩むはずのことを、あっさりと決断する。それも、どちらかと言えば自分にとっては辛い選択をする。流れ的には安易に堕胎という手段を選ぶのだろうが、ジュノはそうしなかった。会話の一つ一つにひねりがきいており、強がりのようにも感じるあたりが余計涙を誘うのかもしれない。

全体の雰囲気から深刻さは微塵も感じることができない。明るい青春を謳歌する女子高生の甘くせつない恋物語といわれても違和感ないだろう。里親制度を利用し、自分の子供を預ける夫婦と出会うくだり。そして、父親である同級生との会話。リアルとは程遠いのかもしれないが、その軽快なテンポで繰り広げられる会話と、自分が妊娠しているということの深刻さをまったく感じさせないジュノの雰囲気。ジュノがなんにでも物怖じしないというキャラクターが本作の一番素晴らしい部分だろう。

作品全体を通して、すべてが善意に満ち溢れている。悪人は一切登場しない。個性的な友達や両親。特に継母にいたっては、自分の娘がバカにされたとわかると、病院の技師と喧嘩をする。誰もがジュノの子供が無事生まれることを願っている。物語のクライマックスである生まれるシーンでは、またしても軽快なテンポでちょっとしたユーモアも含まれている。大きなお腹を抱えて、校舎を歩くジュノ。その表情には恥ずかしさや、後ろめたさなども一切無い。この潔さは素晴らしすぎる。

人の命の大切さ、そして、里親制度という素晴らしい制度。ジュノと同じような悩みを抱えた人は多いのかもしれない。もちろんジュノのような決断はなかなかできないだろう。ただ、命の大切さと、本作の前向きな気持ちを感じさえすれば、どのような決断を下すかは、すべて本人しだいだろう。この手のテーマにしては、万人に受け入れられる雰囲気がすばらしい。



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