ジョンQ 最後の決断


2006.12.31 アメリカならではの問題 【ジョンQ 最後の決断】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
アメリカの保健医療に対する警告的な作品。シチュエーションが違えど、日本でも費用が払えず手術ができないというのはあるだろう。子供のことを思えばこそ突っ走ってしまうジョン。このジョンがどんな人物かが本作の成否に大きな影響を及ぼしている。病院にたてこもるシーンでは病院内の人質がそうであるように観客も自然とジョンに対して同情の気持ちがわいてくる。誘拐された人質がいつの間にか誘拐犯に同情するように、観客を含めた全ての者がジョンを応援する気持ちになっていた。これは相対する警察側のキャラクターが大きいのだろう。病院にたてこもるという一風変わったシチュエーションだが、いくつか気になる部分はあった。しかし、それらを吹き飛ばすようなデンゼル・ワシントンの演技力は大きかった。

■ストーリー

心臓病を患う息子を持つジョンは、助かる道は心臓移植しかないと、担当医から告げられる。しかし、彼には移植リストに息子の名前を載せるお金がない。家財を売って工面したが、全く足りず、病院側はそんな彼をつっぱねる。ジョンは病院に立てこもり、医師らを人質に、息子を助けてくれ…と要求を出した。

■感想
不景気による雇用確保の話から、保健医療に対する警告。日本と違い強制的な保険がないアメリカにとって本作は他人ごとではないのだろう。日本ではなじみのない部分ではあるが、保険が適用されない部分では手術費の確保に頭を悩ませる患者も多いことだろう。そう考えるとまるっきり日本ではありえない話ではない。

追いつめられたジョンが取った行動として病院に立てこもるのは、ジョンが真に息子の手術を望んでいる証拠だろう。別の選択肢としては単純に手術費を稼ぐために銀行強盗などをすればもっとスムーズにいくはずなのに、あえて病院へ駆け込む部分はジョンという人間の人柄を表している。冷酷な病院側、そして苦悩するジョン最終的には自分の命さえ犠牲にしてでも息子を助けようとする姿はある一つの結末として予想していた。しかし、実際にはこれはものすごくアメリカ的だと思ったがハッピーエンドになっている。これはこれでよかったと思う。

皮肉にも最後には協力してくれた人質を監禁した罪で起訴されることとなる。それ以外はまったく罪を問われないのは陪審員制度があるアメリカならではだ。日本ではこんなご都合主義はありえないが、
ヒロイズムを重視するアメリカでは国民を見方につければ、どんな不可能なことも可能になる。そんなイメージはすてきれない。

デンゼル・ワシントンの激しい中にも、どこか心の優しさが雰囲気として現れている演技はすばらしい。頭に血が上り何をするかわからない状態であっても、安心して見ることができるのは、そのキャラクターと雰囲気のなせるわざだろう。強烈なインパクトはないが、息つく暇もなくあっという間に過ぎ去った二時間というような感じだ。



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