イン ザ・ミソスープ 


2006.8.17 突然キレる恐ろしさを実感 【イン ザ・ミソスープ】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
奇妙な肌に包まれたアメリカ人。普段は無表情で突如として怒りの表情をあらわにする。何をやり始めるか分からない恐怖と、え体の知れないものに対してどう対処していいのか分からない恐怖。おとなしい人間が突如として暴れだすようなそんな雰囲気を感じた。グロテスクな殺人の描写がありそれに対してほとんど罪悪感さえ感じていないような雰囲気。確かに即物的で恐ろしいのだが、それよりも一番恐ろしいと思ったのは突如としてキレると何をし始めるか分からない恐怖。そしてそんな人物がもしかしたら自分の身近にもいるかもしれない恐怖の方が大きいのかもしれない。今の時代、似たような殺人事件はどこでも起きているのでなおさらだ。

■ストーリー

夜の性風俗ガイドを依頼してきたアメリカ人・フランクの顔は奇妙な肌に包まれていた。その顔は、売春をしていた女子高生が手足と首を切断され歌舞伎町のゴミ処理場に捨てられたという記事をケンジに思い起こさせた。ケンジは胸騒ぎを感じながらフランクと夜の新宿を行く

■感想
現実に起こりうる、そして現実に起こっている。創作のはずがいつの間にかリアルな物語になっている。単純に猟奇的殺人の物語ならばいくらでもあるし、その程度のことでは別段恐怖を感じることはない。本作は無性に恐ろしい。その恐ろしさの源はフランクのキレ具合にあるのかもしれない。突然地雷を踏んだようにキレだす人間は多いような気がする。そしてこのフランクほどにはいかないまでも大なり小なり人はキレる部分というのを持っているだろう。他人がその部分に触れようとしたときには何かしらの警告を発するのが普通だ。しかし中には警告も何もなく突然沸点まで到達する人もいる。それがちょうど本作のフランクのような人物なのだろうか。

怒りの大小はあるにしてもフランクのような人物をあちこちで見たことがある。それだけにケンジと同じ心境になったことを憶えている。下手に手出しできず、かといって離れると怒りをかう。もうどうしようもない状態でほっとくしか手がないという状況だ。最終的には残酷な殺人風景と共に心身が麻痺したような形でケンジはどうにか逃げ切ることができたが、それができない人は多いだろう。一度取り付かれると決して逃げることはできない。作者はリアルにするつもりはなくとも時代が本作に近づいているように
今読むとやけにリアルに感じてしまった

リアルな殺人描写には何も感じなかった。それは恐らく現実感がなさ過ぎるからだろう。人の死に対して鈍感になっているというのもあるがそれは物語の中だけの話で、実際に実物を見たら正常ではいられないだろう。そう考えると、いくらリアルといっても作品として読む限りはどこか頭の中で制御弁のようなものが働いているようだ。それが働かない人は読まないほうがいいかもしれない。



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