歩兵の本領 


2007.9.26 さすが元自衛隊員 【歩兵の本領】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
元自衛隊員という経歴をフルに生かした作品なのだろう。自衛隊の内部の話は、今までになく新鮮で、そして驚かされることばかりだ。本作を読んでいると自衛隊内部という前提がなければ、刑務所内部の話と言ってもほとんど差し支えないかもしれない。自衛隊内部の個性的な面々。普通の常識が通用しない、なんでもありな世界の中で、隊員たちそれぞれの悩みや出来事を描いている。さすがに経験者が書くとあって、リアル感は相当なものだ。理不尽な暴力と不自由な生活。そんな中でも本作に登場する自衛隊員たちは、なんだかとても楽しそうに思えてしかたがなかった。

■ストーリー

名誉も誇りもない、そして戦闘を前提としていない、世界一奇妙な軍隊・自衛隊。世間が高度成長で浮かれ、就職の心配など無用の時代に、志願して自衛官になった若者たちがいた。軍人としての立場を全うし、男子の本懐を遂げようと生きる彼らを活写した、著者自らの体験を綴る涙と笑いの青春グラフィティ。

■感想
タイトルどおり、本作に登場するのは防衛大学卒の幹部ではなく、街でスカウトされ、いつのまにか自衛隊に入っていたというような下っ端の隊員たちの物語である。自衛隊だからといって銃器を扱いドンパチする作品ではない。自衛隊内部での理不尽な出来事や、ありえないほど厳しい規則、そして何のためにあるのかわからないしきたりなどをユーモアを含めて描いている。

今の時代であれば、それほど自衛隊に対して負のイメージはない。しかし、作者がいたころはまさにイメージはこれ以上落ちないほど最悪だったのだろう。食事だけはしっかり食べられるが、それ以外はしごきを超えた肉体的鍛錬と、先輩に対する従順な姿勢。自衛隊内部では階級とは別に、飯の数(年数)で地位が決まるというのも印象に残った。ほんのちょっとの外出であっても外出計画を立てなければならない。そんな生活はまったく想像できないのだが、すべて事実なのだろう。

本作を読んでいる間中、頭の中には防衛大学生が休日に制服を着て街にでていた姿を思い出した。もちろん、その姿と本作はだぶるものではないのだろう。ただ、規則に縛られ休日も制服を着てすごさなければならないほど規律正しい組織という意味では同じかもしれない。これといって自衛隊に憧れがあるわけではないが、絶対におちこぼれを作らせない連帯責任が当たり前のこの組織に、なんとなくだが、少しなら参加してもいいかな、なんて思いはじめてしまった。

この手の作品はなかなかないと思う。読んでみると
かなり新鮮な感想をもつことだろう。



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