変身 フランツ・カフカ


2006.7.18 虫は何を比喩しているのか 【変身 フランツ・カフカ】

                     
■ヒトコト感想
ある朝目が覚めたら自分が虫になっていた。そしてその状況に対して驚くことなく淡々と仕事に行こうとする。虫になったことについては奇妙なのだがそれ以外の周りの対応の仕方を考えると、もしかしたら虫になったと思ったのはグレーゴル本人だけで実は外見上はなんの変化もなく、ただ精神的に病んでいただけなのかもしれない。そんなことを考えながら読むと意外にしっくりとくるから不思議だ。虫の描写が細かく、リアルに想像してしまうと虫嫌いにはきついかもしれない。僕が想像した虫は緑色で赤いポツポツがあちこちにあり毛虫の巨大化したようなものを想像した。ちょうどナウシカのオウムのような感じだ。

■ストーリー

ある朝、グレーゴル・ザムザが不安な夢から目を覚ましたところ、ベッドのなかで、自分が途方もない虫に変わっているのに気がついた…。私はいったいどうしたのだろうか。恐怖におののく両親と女中達。親身になって世話をしてくれる妹。他人を気にする性格から仕事は誰よりも正確にこなしてきたグレーゴル。ちょうど仕事に遅刻しようとしたそのとき、朝起きると自分の体の異変に気づいたのだった。

■感想
朝起きたら虫になることは何を比喩しているのか、そんなことを考えながら読むと小難しくなってしまう。ただ単純に虫になったグレーゴルの行動と周りの反応。そして健気に世話をやく妹の存在。虫になったことに対しての驚きよりもまわりが虫になったグレーゴルを見てもそれがグレーゴルだと気づいたことに違和感を感じた。最初に思ったのは、もしかしたら家族はグレーゴルがこの奇妙な巨大な虫に食べられてしまったと思うのではないかと想像していた。家族が虫をすぐにグレーゴルと認識することがポイントかもしれない。

全てが夢で終わる夢オチだとか、ある朝起きたら普通の人間に戻っていたという結末を想像していた。しかし本作の結末はそれらの希望を突き放すようなあっさりとした終り方だ。結局グレーゴル自身は皆に疎まれ、その存在事態を否定されている。もしかしたら作者の中には家族に愛されず誰からも疎まれるものの気持ちを虫として表しているのかもしれない。嫌われながらも餌を与えられ死なない程度に飼い殺しされていく。そんな生活に嫌気がさしたのか自然に餌を食べなくなったグレーゴルの気持ちは
ささやかながらの抵抗なのかもしれない。

文学的にどんな意味があって、どれだけ深い隠されたテーマがあるかわからない。しかし読んだ印象としては非常に淡々としていて虫になった本人でさえ自分の状態を客観的に見ている。当事者がそんな感じなので、物語全体も非常に無機質で非現実的でリアリティはない世界に思えた。しかし家族やその他の人間のグレーゴルに対する心境だけがやけに細かく描写されていたのがとても印象に残っている。

面白いとかいうレベルは超えた。とても不思議な作品だ。



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