走れ!タカハシ 


 2008.6.16  あえての広島カープ 【走れ!タカハシ】  

                     

評価:3

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■ヒトコト感想
作者はもしかしたら高橋慶彦に何か強烈な思い入れがあるのではないだろうか。作者にしては珍しくわかりやすい世界観での短編。必ずカープファンが登場し、高橋慶彦を応援する。それも生半可な応援の仕方ではない。これほどまでに、一人のプロ野球選手を応援するという短編は今まであっただろうか。良く考えると、とりたてて重要な位置を占めているわけではない。なぜ、高橋慶彦なのか。これは高橋慶彦以外では成立しないのだろうか。それは作者にしかわからない。高橋慶彦が走ることによって、希望をもたらす。なんだか、病気の少年のために、ホームランボールをお見舞いとして持ってくる。そんな古臭さとは違った趣きを感じてしまった。

■ストーリー

ヨシヒコが走るとき、何かが始まり何かが終わる。「ファーストベースにヘッドスライディングしてもそれが様になる日本でも珍しいプロ野球選手」と著者が激讃する広島カープ高橋慶彦遊撃手の輝ける肉体を軸に、野球を楽しむ普通の人々を配した軽快な短篇集。

■感想
作者は高橋慶彦と何か関係があるのだろうか。今ではめずらしい(失礼)カープファンが作品の中に登場し、高橋慶彦を応援する。送られてきた品物についても、もしかしたら作者が実際に高橋慶彦から貰った物なのかもしれない。高橋慶彦が走ればうまくいく、そして希望がもてる。短編としての必要性はそれほど感じないが、今読むとマイナーなカープファン。それも一選手をこれほど扱うということに逆に新しさを感じてしまった。誰もが知っている超メジャーな選手ではないことも良いのかもしれない。

高橋慶彦の走りに希望をのせて応援する。短編に登場する人物たちは、どこか生活に疲れ何か人生に対する超えなければならない壁をもっている。それを克服するために高橋慶彦を応援する。それはあたかも、「このゴミがゴミ箱に入れば、オレの願いは叶う」というように、しょうも無い他力本願な流れなのかもしれない。しかし、その思いは伝わってくる。誰もが何かよりどころになる希望のようなものをもちたい。それがたまたま盗塁する高橋慶彦だったというだけだ。

どうやらタカハシの部分がイチローとなった映画もあるらしい。自分的にはイチローよりもタカハシの方がしっくりくるような気がする。メジャーのイチローに願いを託すよりも、広島の高橋慶彦に自分の願いを託すほうが、叶いそうな気がする。絶対にそんなことはないのだが、メジャーは遠いところの、手の届かない人。逆に広島ならば、もしかしたらなんてことも思ってしまうのかもしれない。高橋慶彦の現役時代はほとんど知らないが、当時は今のイチローほど人気があったのだろうか?

作者の短編としては、世界観がものすごく理解しやすいし、共感も得やすい作品だろう。



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