春の雪


2007.3.1 甘いとは言えない恋愛模様 【春の雪】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
小生意気なわがままな学生がこれほど似合うのも夫妻木聡の演技力なのだろう。聡子役の竹内結子はおそらくお腹に子供がいるころだろうか、ちょっと全体的にぽっちゃりとしていた。そんな二人が演じる甘いとは言えない恋愛模様。終始二人はどこかすれ違っていたのかもしれない。それは二人がすごした時代の影響も大きいのだろう。大正初期の倫理観と世間の流れ。それらすべてが清顕と聡子には味方しない。清顕にとってはいつでも手の届くところにある物には興味を示さず、自分の手の届かない他人の物とわかると興味を示す。なんとも悲しい結末の作品だ。

■ストーリー

大正初期を舞台に、栄華を誇る侯爵家の若き子息、松枝清顕と、没落の気配を見せ始めた伯爵家の令嬢、綾倉聡子の悲恋を描く。宮家の王子から求婚を受けた聡子が、それでも清顕と関係を持ってしまい、取り返しのつかない運命をたどることになる。

■感想
時代的に男尊女卑の傾向が色濃く出ている時期でもあるのだろう。まず最初に見た第一印象は明らかに同年代であるはずの清顕と聡子の境遇の差だ。家の問題もあるのかもしれないが、小生意気な清顕に対して、何に対しても一歩引くような聡子。二人の心の内の熱く煮えたぎる部分が見えてくるのは常に清顕だけであり、聡子はどこか一歩引いているような気がした。

本作を禁断の愛というには少し違和感を感じた。最初のころの清顕の態度は明らかに聡子をなんとも思っていない雰囲気だった。それが一つの出来事をきっかけにして、突如としてそこまで熱くなれるのだろうか。清顕の思いの強さが強ければ強いほど、最初のころの思いはなんだったのか、説明のつかない矛盾さがわいてきた。それに対して聡子の終始一貫した思い。ただ
愛するあまりの最後の決断は後味の良くないものとなっている。

大正初期の雰囲気を存分に味わえる映像と俳優たちの演技。夫妻木の時代感を反映するような自信たっぷりの振舞い。大正初期の侯爵家の息子ならば傲慢でわがままなのも納得できる。何かを達観したような人より頭一つ上から物を見る物言い。それら自信過剰な雰囲気もわがままで、聡子をいいように振り回す役回りにはぴったりとはまりすぎている。最後に意外なほど一途に思う場面でも、変な自尊心のようなものがあるからかもしれない。

悲しい結末の作品だ。



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