博士の愛した数式


2006.6.8 ホンワカとした気持ちになる 【博士の愛した数式】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
80分しか記憶が持たないならば毎回家政婦は新しい家政婦として認識されるはずだ。しかし時間が経つにつれて80分しか記憶が持たないのに、そこには慣れ親しんだ関係性のようなものを感じられるから不思議だ。頭では80分しか記憶できないが、心と体にはしっかりと記憶されていたのだろう。数学者としてはとても不幸な障害だが、それに悲観的になるわけでもなく、淡々と日々をすごす。そこだけ時間が止まっているようだ。

■ストーリー

交通事故の後遺症で、80分しか記憶が持たない博士の元に、新しい家政婦がやって来る。博士はその家政婦に対して「素数」や「完全数」をやさしく説明するうちに二人は打ち解けてくる。やがて彼女の息子も訪ねて来るようになり、博士は息子の頭の形から彼をルート(√)と呼び、3人の絆は深まっていくのだが・・・。

■感想
80分しか記憶が持たない。それは想像以上に辛いことなのだろう。それが数学者であるならばなおさらかもしれない。交通事故の後遺症とはいえ、自分の境遇に対して決して悲観的になることなく、前向きに研究に取り組む姿はそのスローテンポな話し方と共に、見ているものをホンワカした気持ちにさせるものがある。

家政婦役の深津絵里も実年齢よりはかなり若い役なのに、そのフレッシュさと体からあふれ出るような元気なオーラから沈みがちな雰囲気を一気に明るくしている。普通に考えれば家政婦としては面倒な家になるのだろう。しかしそんなことを微塵も感じさせずひたすら明るく、博士に対して接する姿は
お嫁さんにしたいタレントに食い込むのでは?と思うくらい心打たれる姿だった。

合間合間に登場する博士の数学的薀蓄。普通に聞くと、なんてつまらない眠たくなる話だと思うのだが、博士のスローテンポなしゃべりと分かりやすく、基本からゆっくりと説明するその姿を見ると、不思議と簡単に頭の中に入っていくような気がする。これほどホンワカとした雰囲気と、数学特有の何だからわからない難しさというのを排除した、基本に忠実な教え方をすれば誰でも理解でき、拒否反応もないのだろう。

結末はどうなったとか、劇的な最後を迎えたというのはない。その変わり見終わってからなんだか少し数学という学問が好きになれたような気がする。



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