GOTH 夜の章 乙一


 2006.3.25 残酷だが嫌悪感は少ない 【GOTH 夜の章】  

                     
■ヒトコト感想
恐ろしく残酷な描写やグロテスクな場面が多数登場するのだが、何故かそれほど嫌悪感を感じない。それが果たしてよいことなのかわからないが、これは作者の文体によるところが大きいだろう。森野夜と僕が登場する話がいくつか収録されており、二人の特異なキャラクターが生かされている。二人に多少共感できる部分はあるにせよどこか自分達が特別だということを強調しているようでならない。その結果残酷描写も登場人物達がそうだと感じなければ、読者としても残酷な印象が薄れるものだなと感じた。

■ストーリー

森野夜が拾った一冊の手帳。そこには女性がさらわれ、山奥で切り刻まれていく過程が克明に記されていた。これは、最近騒がれている連続殺人犯の日記ではないのか。もしも本物だとすれば、最新の犠牲者はまだ警察に発見されぬまま、犯行現場に立ちすくんでいるはずだ。「彼女に会いにいかない?」と森野は「僕」を誘う…。

■感想
いくつかの短編の中では面白いものもあれば、つまらないものもある。印象に残っているのは、最初の話と犬の話だ。読み始めてしょっぱなから強烈にグロテスクな場面が多数登場し、そこで強烈なインパクトをうける。しかしその後は想像していたよりもまろやかな印象をうけた。森野が犬が嫌いであったり、僕の妹が死体に遭遇しがちだったりと細かな設定があちこちにちりばめられている。

僕と森野二人とも周りと異なり、冷めた人間であると自覚しながら、表面上は協調性のあるフリをしている僕。そんな気はさらさらない森野。その森野はきっと無表情であり、美少女であり、冷たい雰囲気をもった神秘的な少女なんだろう。どこかにありそうな設定だ(笑)

夜の章というからには森野が主役となるのかと思いきや、そうではない。ただし森野の秘密が明らかになるというのがあるが別にそれはインパクトはない。やはり犬という作品が一番インパクトがあった。結果的に読者の想像からまるっきり逆の展開だったがその強引さにかなりビックリした。叙述トリックと言えるのかわからないが、100人いれば100人とも引っかかってしまうだろう。しかし、インパクトがあるのと面白いのとは別ものだ

最初に拒絶反応を示す人は恐らく残りの作品も駄目だろう。読む人を選ぶ作品だ。




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