グッバイ、レーニン!


2007.4.25 言いようのない寂しさ 【グッバイ、レーニン!】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
歴史的事実を利用した巧妙なコメディ。8ヶ月の昏睡中に東西ドイツが統合し、それに気づかないまま生活する母親。母親思いの子供たちのけなげさとありえないような展開。パッケージを偽るためにビンの中身を入れ替えるのは許せるが、テレビのニュースまで作ってしまうのには驚いた。次第に侵食してくる資本主義を必死に気づかせないよう奔走するその姿は、いまだに共産主義を捨てられない人々を代弁するかのように資本主義のあざとさを表現しているのか。本作はコメディと言いながら、実際には笑えるというよりも、最後にはいいようのない寂しさを感じてしまう。

■ストーリー

主人公アレックス(ダニエル・ブリュール)の母親(カトリーン・ザース)は生粋の共産主義者で、彼が抗議デモに参加して警官に捕らえられたのを見て、心臓発作を起こしてしまう。彼女は8ヶ月間昏睡状態に陥ったが、その間にベルリンの壁が崩壊してしまった。目を覚ました母親の弱った体にショックを与えたくないアレックスは、共産主義がまだ存在していることに偽ることにした。

■感想
資本主義の波にのまれながらも、必死で抵抗するアレックスたち。資本主義の中では淘汰されるべき存在となってしまう共産主義の遺物たち。今の時代だからこのような描写も笑っていられるが、その時代の共産主義者たちはどんな思いだったのだろうか。アレックスの母親と同じように激しいショックを受けるのだろうか。

資本主義の象徴でもあるコカコーラが悪者ではないが、なんだかとてつもなく邪魔なものに思えてしまう。母親を気遣う子供たち。テレビのニュース番組を自前で作ってしまうほど力の入れようが面白い。それでいて、なんでもないミスをしたり。資本主義の中で必死に共産主義を貫くフリをするのが本作の面白さのポイントだろう。

8ヶ月昏睡状態の母親にとって目が覚めたら突然資本主義まみれの現実。いったいどう感じるのか。作中ではそれに気づいたようなそぶりもあるが、はっきりとは明言されていない。少しの間田舎を離れ、都会暮らしをした若者が久しぶりに田舎に帰るとまったく様変わりした田舎の風景にショックを受けるような感じだろうか。いや、それ以上に信じていたものを
根底から覆されるのでショックは大きいだろう。

面白おかしくしているはずだが、消えていく共産主義と母親の気持ちを考えると寂しい気分になった。



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