ふたたびの恋 


2006.12.23 中年の恋に拒否反応 【ふたたびの恋】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
しんみりと心に染み渡る恋に関する短編集。そこには純粋な恋だけでなく出会いや別れがある。当然読者はそこに感情移入しようとするのだが、なんだか登場人物がすべて中年のためにうまく入り込むことができなかった。おそらくこれはとんでもない偏見で自分のことを棚にあげていると思うが、どうしても中年の恋に関しては受け入れることができない。極論を言えば、読んでいると虫唾が走るというか、不安定な気持ちになってしまう。そんな理由から本作を読んでいると、中年の恋に関して簡単に受け入れることはできなかった。

■ストーリー

「わたしを助けて」。休暇で沖縄へ来た脚本家の前に、かつての恋人が現われる。彼女は「恋愛ドラマの教祖」と呼ばれる売れっ子脚本家となっていた。土曜ドラマのためのシナリオを二人で作り上げていく、息苦しいような四日間の後に…。じんわりとせつない恋の短篇集。他に遺作となった次回作プロットを収録。

■感想
3つの短編集と遺作となったプロット。3つの短編集はそれぞれ特徴があり読みやすく、3つ目の作品は子供がいる親であれば確実に泣けるだろう。それぞれが中年ともいえる年代の人物たちで、それぞれ心に悩みを抱えている。短編のため、主人公達の詳しい人物描写がないのだが、それでもしっかりとその人物像を頭に思い浮かべることができるのは作者の力のなせる技だろう。

中年の恋に関してあっさりと受け入れることができないのは昔からだ。自分がその年代になれば変わるのだと思うが、どこかで親の年代というような思いがあるようだ。おそらくこれは自分がその年代にまで到達しなければ解消されない個人的な問題なのだろう。頭に思い浮かべるイメージとしても中年よりも若い方がいいと思うのは一般的かもしれない。しかし中年には中年の良さというものがあるのもしっかりとわかってはいるが、受け入れることができない。これは大問題だと自分でも認識している。

本作の短編で泣けるかどうかは単純に年代的な話と、自分の経験とどれだけだぶるものがあるかに集約されているような気がする。僕自身は本作にあるような年代でもなければ経験もしていないので、テレビドラマを見るように物語を楽しんでいた。3つ目の作品では普通ならば感動ポイントであるはずの結婚式のシーンでも納得いかない気分があった。子供の死を乗り越える材料としてはどうなのだろうか。そこのニュアンスを理解することができなかった。

遺作のプロットはそれだけ読むとかなり面白そうな気がした。これだけ綿密な構成の元に書かれる小説を素人に酷評されたりする職業。小説家というのはとことん大変な職業だと思った。



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