2005.10.17 ちょっとしたラブコメあり 【封印再度】
■ヒトコト感想
この際また密室トリックだということには触れないことにする。
分かりやすければ分かりやすい程イメージしやすく、のめり込みやすい。
今回のように壺から物理的に取り出せない鍵を使わないと開かない箱というかなりシンプルなものが
テーマとなっている。このパズルが全ての鍵を握っているのだが、解き方はともかくとして
そこに至るまではとても引きつけられた。
シリーズ通しての犀川と萌絵の関係がここにきて進展したかと思ったが、それほどでもなく
ちょっとしたラブコメ風味も含まれている。
■ストーリー
50年前、日本画家・香山風采(ふうさい)は息子・林水(りんすい)に家宝「天地の瓢(こひょう)」と
「無我の匣」を残して密室の中で謎の死をとげた。
不思議な言い伝えのある家宝と風采の死の秘密は、現在にいたるまで誰にも解かれていない。
そして今度は、林水が死体となって発見された。
2つの死と家宝の謎に人気の犀川・西之園コンビが迫る。
■感想
犀川と萌絵の関係が最初のすべてがFになると比べて随分親密になった印象をうけた。
それに伴って二人の絡みはいろいろな副産物を生み出し、
ちょっとしたラブコメのような感じにさえなってしまっている。
しかし、それが適度なバランスでミステリーと組み合わさっている為に
とても心地よく読み進めることができた。
この二人が存在していなければシリーズ通して随分味気ない物になっていただろう。
封印再度というタイトルも秀逸だと思う。「WHO INSIDE」とかけていて
どちらも内容に一致する物でありながらも不自然ではない。
このタイトル通り、密室なのだがパズルの謎と密室の謎、僕はどちらかというとパズルの謎ばかりに
気がいってしまい、密室の謎についてはそれほど興味を持たなかった。
よくある手法なのかもしれないが、探偵役の人物(本作では犀川)が一人だけ事件を解明し
分かっているのだがそれをなかなか発表しない。
周りの人物共々、読んでいる者をヤキモキさせる。
このじらされる感じがミステリーの醍醐味かもしれない。
散々ひっぱったあげく、とんでもない種明かしをされた日には逆にこの演出がアダとなるのだが
過剰な演出に耐えられるほどのうまいトリックの解明の仕方をしている。
解明の仕方によってはかなりしょぼい印象を持ってしまう危険性があったと思う。
S&Mシリーズの中盤に来て、読む方もかなりこなれてきたのだが、
ここから犀川と萌絵の二人の関係に急展開がありそうな予感がしてきた。
おしらせ
感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
pakusaou*yahoo.co.jp