ファイナル・カット


2006.1.24 まるで日記を見られるような 【ファイナル・カット】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
生まれたての赤ちゃんの脳にチップを埋め込みそれが日の目を見るのは死んだ後という非常にその存在意義がとわれるチップだと思うのだがそれをこぞって頭に埋め込みたがるセレブ達。その神経が良くわからなかった。自分が死んだ後の葬式で故人を懐かしむためだけに使われるようなチップを頭の中に埋め込みたいのだろうか?自分の人生の一部始終を編集者に見られることに抵抗はないのだろうか。例えば死ぬ前に隠していた日記のことが気になるような、そんな感覚は生まれないのだろうか?僕にはチップを埋め込む神経が理解できないが、登場人物達の必死さを見るとそれもありなのかと思えてしまう。

■ストーリー

亡くなった人の人生のリメモリー(追悼上映会)の為に、生まれたての赤ちゃんの脳に埋め込み人間の全生涯を記録する「チップ」を開発したアイテック社それを、「ギロチン」という名を持つコンピュータを使って亡くなった人の人生の美しい部分だけを編集することができる第一人者であるアランは、自身の感情を排して、どんなに不道徳な人生も感情移入せずに直視し冷静に編集することができるためセレブ達やすねに傷を持つ顧客たちからひっぱりだこだった。ある時アイテック社の創始者であるバニスター氏が亡くなり、リメモリー映像を創る為、未亡人と娘へのインタビューをし、バニスター氏の記憶映像を見ている時、自分自身の幼い頃の罪の意識に苛まれていた、死んだはずのルイス・ハントとそっくりな男を見つけて激しく動揺し、彼の所在を必至で突き止めようとする・・・・・

■感想
チップを編集することができる選ばれた人間であるアロン、彼がが編集する編集機ギロチンってのは名前もそうだが見た目も木目調でどこか古めかしく、その機能自体はおそらくかなりハイテクな物なのだろうが、雰囲気はまさに選ばれた者しか操ることができないまるで魔女の鏡のような印象を受けた。

人の記憶の一部始終を見ることができれば、本作のように何かその人だけしか知らないような秘密を得るためには殺人が多発しそうな気がする。それと共に犯罪事件に巻き込まれた場合は死者が最後に見た映像を分析することで犯人逮捕の近道となるのだろう。しかし、どう考えても一般人にとってそのチップの恩恵を得ることができるのは自分が死んだ後であり、過去の栄光にすがりたいだけのような気がする。アロンのように幼いころのトラウマから脱却するためにチップを利用するとという手もあるのだろうがそれを加味しても、チップの存在意義が良くわからなかった。

主演のアロンをロビンウィリアムスが演じることによって、あの独特の苦虫を噛み潰したような表情がアロンの苦悩に満ちた人生をあらわしているようで画面からも苦しさがよく伝わってきた。人間は自分の都合の悪いことは忘却の彼方に忘れ去ってしまうのだが、それが元でアロンのようにトラウマとなってしまう場合もあるのだろう。最後にはアロンのトラウマの原因を解明することができ、アロンのさわやかな泣き笑いのような顔がとても印象的なのだが結末はとても悲しい終わり方となっている。これがベストなのだろうか。

人生を記憶するチップというのは非常に面白いと思うのだが、それが活用されるのが死後であるというのと人の良い部分だけを編集するという編集人の苦悩を描いた作品なのだが、もう少しチップを他の用途に使ってもよいのではないかと思った。



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