エイジ 重松清


2007.2.26 中学生の気持ちになれるか 【エイジ】

                     
■ヒトコト感想
本作をどの立ち位置で読むか。それによって感じはずいぶん変わってくるだろう。中学生の気持ちになるのか、それともあくまで傍観者として大人の立場で読むのか。僕は中学生として読んでしまった。すでにずいぶん過去のことだが、エイジの行動に何かしら思い当たる部分はある。あのころの年代はカッコイイことがすべてでありダサイことは最悪という位置づけであった。どこにでもある普通の中学生活。唯一つ違うのは同級生が通り魔だということだけだ。何が正しくて何が悪いのかそれすらも曖昧になりがちな中学時代。その危うさを有り余るほど表現している作品だ。

■ストーリー

ぼくはいつも思う。「キレる」っていう言葉、オトナが考えている意味は違うんじゃないか―。通り魔事件が相次ぐ東京郊外のニュータウン。犯人はぼくの同級生。でもぼくの日常は事件にかまけているほど暇じゃなくて…。家族、友情、初恋に揺れる14歳、少年エイジの物語。

■感想
中学生だからといって何か違った感覚があるわけではない。大人でも「キレる」こともあればむしゃくしゃすることもある。しかし大人ならばさまざまなしがらみからそれらを表に出す前に自分の中に閉じ込めてしまう。中学生はその閉じ込め方がわからずに、ちょっとしたことをきっかけとして爆発させてしまう。もちろんこれは大人にも言えることだろうが。

エイジと同じ中学生の気分で読むとかなり共感できる部分は多い。何がかっこよくて何がかっこ悪いのか。異常にプライドが高い時期でもある。物事の優先順位や重要さが曖昧な時期でもある。大人からするとなんでそこまでするのかと疑問に思うことでも中学生の価値観からすれば、それは当然のことのように思えてくる。中学とうい何かにつけて不安定な時期を的確にエイジという少年を通して表現している。

本作は単純に中学生の気持ちを描いた作品としてだけでなく、少年犯罪に対する法の取り組み方にも言及している。十四歳未満の少年が犯罪を犯しても基本的には罰せられることはない。このことについて作者の考えは明確になってはいない。しかし何でもかんでも保護すればいいというのは間違いだというメッセージを受け取ることができた。通り魔事件をきっかけに神経質なまでに周りを気にするようになったツカッちゃん。彼の気持ちが実は作者の一番言いたいことだったのではないだろうか。

なぜこれほどまで中学生の気持ちを表現できるのか。そう思う自分も中学生ではないので、本物の中学生が読んだら「こんなの違うよ」と思うかもしれない。




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