誰も知らない


2005.9.6 あまりにリアルで落ち込む 【誰も知らない】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
実話を元にした映画化であり、良くできているからこそ作品からあふれ出るイメージを
そのまま受け取ってしまい、結果として見終わってとても暗い気持ちになった。
子供達の演技がものすごくリアルであり、現実にすぐそこで起きているような錯覚さえ覚えた。
子供達を置き去りにした母親や、無関心な周りの大人達に腹が立つわけでもないのだが
何故か無性に怒りがこみ上げてきた。
実話を元にしていようが、いまいがこの生っぽさというかリアルさは何によって
もたらされているのか不明だ。

■ストーリー
周りに母子家庭と気づかれないようひっそりと暮らす母と四人の子供達。
「大きな声で騒がない」「ベランダや外に出ない」等のルールを決めひっそりと生活していた。
ある晩遅くに酔って帰ってきた母は、突然それぞれの父親の話を始める、
だが翌朝になると母の姿は消えていて、代わりに20万円の現金とアキラ宛に
「お母さんはしばらく留守にします。京子、茂、ゆきをよろしくね」というメモのみ残されて・・・。
この日から、誰にも知られることのない4人の子供たちだけの生活が始まった。

■感想
このリアルな生っぽさは、本作の日常の風景がものすごく自分の子供時代に住んでいた場所と
シンクロするからだろう。どこにでもあるありふれた風景の中で無関心な大人達であり
周りの友達の悪気のない冷酷さ。

学校に行きたがる子供達。そのころの年代は学校に行きたがるものなのだろうか??
僕自身は別に学校に行きたいなどと思ったことはほとんどなかったような気がするが(笑)
何不自由なく暮らしているものにとっては、より楽な方へと流れてしまう。
優先順位的に学校は僕の中では低かったのだろう。
本作の子供達のようにまずは食べ物であり、その後学校という選択しにいきつくまでには
よほどのことがない限り、その気持ちを共感することは難しいと思った。

監督は子供達に脚本を与えずに、その場その場で演技指導をしたらしい。
おそらく撮影も時系列に行われたことだろう、最初のころと後半では子供達の演技も自然であり
それぞれが辛い思いをする演技なのだが、それを生き生きとこなしているような印象を受けた。
後半になると大人がほとんど登場せずにほぼ子供達だけの関係を淡々と語っている。
登場する子供達が総じて皆口数が少ない(それは辛い生活のせいもあるだろうが)中で
なんとも言えない部屋の乱雑さを見たときには、ホントに悲しくなり怒りがこみ上げてきた

結末は一人の子供の成長物語と言えなくもない終わり方なのだが、そうするには
少しその先の展望が甘すぎる気がした。ある衝撃的な事件が起き、それをきっかけとして
変わっていくのだが、変わり方として解決策は何も見いだされていない。
結局はまた同じ生活を繰り返すだけだ。
新しい家族を加え、その後どうなるかわ分からない。子供達も含め、誰も知らないのだろう。

行く末を案じると、また暗い気持ちになってしまう。



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