ビタミンF 重松清


2007.3.4 自分目線で考えながら 【ビタミンF】

                     
■ヒトコト感想
リアルに本作の主人公の年齢ではない。しかし近いことは確かだ。あともう十年もすれば本作と同じような経験をするかもしれない。いくつかの短編はすべて中年を主役として語られている。その内容は子供のことや夫婦のこと、そして年をとった親のことまで。すべてが避けて通れない問題のような気がした。今すぐ自分に当てはめることはできないが、何年かすると同じような経験をするかもしれない。常に自分目線で考えながら読んでしまった。自分ならばどうするだろうか、そしてどんな結末になるだろうか。本作を読んで近い未来を想像するのは、現実的にリアルに近い年齢だからだろう。

■ストーリー

38歳、いつの間にか「昔」や「若い頃」といった言葉に抵抗感がなくなった。40歳、中学一年生の息子としっくりいかない。妻の入院中、どう過ごせばいいのやら。36歳、「離婚してもいいけど」、妻が最近そう呟いた……。一時の輝きを失い、人生の“中途半端”な時期に差し掛かった人たちに贈るエール。「また、がんばってみるか」、心の内で、こっそり呟きたくなる短編七編。

■感想
ある時は子供目線で、あるときは親の立場で。本作の中でさまざまなパターンが登場するのだが、親子関係に焦点が当てられている作品ではどちらも考えられる。自分が中学生の時、親とはどんな接し方をしていたのか。親になったときにどう接するのか。すべての作品が何も考えずに読むことができなかった。かならず何か自分の立場に置き換えて真剣に考えながら読んでしまった。

中年での離婚や年老いた親との関係。特に最近希薄になった親との関係を思い起こさせるような作品もあった。すべてに同意できるわけではないが、確実に本作を読むことで今までとは少し違った考え方をするようになってきた。本作の主役たちの年齢にはまだまだ達しないが、それでもそお遠い未来の話ではない。独身貴族を満喫するのもソロソロと考えている今、本作を読むと恐怖は感じないが、なにかとてつもない大きな壁が今後待っていそうな気がした。

読む人の年齢によっては「がんばるかー」という気持ちになるかもしれない。しかし僕の年齢では逆にリアルに感じすぎてしまい、頑張る以前にこの大変な局面に今後どうやって耐えていくか。そんなことばかり考えてしまった。もちろん、それだけで終わるのではなく自分が子供のころに思った親に対する気持ち。それと同じことを子供に示すことができるのか、自分は立派な親になれるのか。本作の主役たちのような人物になれるのか。そんなことばかり考えてしまった。

今の年齢だからこそ、心にずっしりと残る作品となった。




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