バッテリー


2007.8.4 納得できない野球少年映画 【バッテリー】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
一見さわやかな野球少年映画のように見えるが、何かがおかしい。過剰なまでにヒステリックな母親であったり、マスオさん的な父親であったり、性格に難がありすぎる主人公の巧であったり。さわやかなのはキャッチャーの豪だけだ。この豪の少年らしい純粋な心と、あけっぴろげな性格。そして、広島弁の中に感じる男気。正直この豪がいなければ、ずいぶんとひねくれた映画のように感じたかもしれない。いくら天才野球少年だからといって、それはないだろうという場面や、そうはならないだろうという場面がいくつかある。さわやかというよりも、どこかひねくれたものを本作から感じた。

■ストーリー

もうすぐ中学生になる天才ピッチャー、原田巧。彼の球は速すぎて捕手も捕球出来ず、野球部でも孤立。また、母親は病弱な弟を彼より優先し、家族の中でも孤立しがちだった。だが、中学入学目前の春休み、一家は弟の健康のため岡山県に引っ越し、巧は自分の球を受けることができる捕手・豪に出会う。しかし野球部に入学した巧を待ち受けていたのは、監督による徹底した管理野球と、彼の才能に嫉妬する先輩たちによるイジメだった。巧はそれらに屈せず自分を貫くこうとするが・・・

■感想
天才ピッチャーの原田巧。純粋な野球映画として見ると、随分横暴というか、いくらなんでもそれはないだろうという思いがあった。画面に登場する巧は、それなりに努力をしているのだろうが、そのひねくれた性格から、観衆の共感を得ることは難しいだろう。ひねくれの元凶は母親であったり、環境であったりするのだが、どうも野球少年らしいさわやかさというものを、この巧からは一切感じることができない。スマートでクール。なんでも自分の思い通りに進め、唯我独尊をつらぬく。あまりにずば抜けていると少年らしさを感じない。

巧以外のチームメイトは、ごく普通の中学生だ。巧とバッテリーを組む豪が、巧のクールさとは正反対にさわやかで熱く、そして一本木で真っ直ぐな、観衆からはかならず支持されそうな、そんなキャラクターだ。この豪の存在で、かろうじてさわやか作品となってはいる。しかし、主人公の無口で、不機嫌そうな表情が常に付きまとっている。そして、野球映画独特の熱血さを感じない。
努力や根性というものから無縁のように感じるのも、主人公のキャラクターのせいだろう。

巧に対して、全うに注意できる存在が皆無なのも気になった。ヒステリックで弟命の母親と、たよりない父親。遠くから見守るタイプの祖父に、最初こそ強気にでていたが、すぐに勢いをなくした野球部の監督。なんだか巧を強く導くような存在がなく、ただ、巧と豪、二人でなんでも進めていくような、そんな雰囲気だった。少年野球らしい努力、根性。そして困難にぶち当たったときの野球に対する熱い思いを感じることができない。

基本はさわやか路線なのだろうが、どうも野球の部分であったり、周りの環境であったり、納得できない部分が多々あった。



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