青と白で水色


2008.1.4 ありきたりなテーマながら… 【青と白で水色】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
平凡な日常とありきたりなテーマ。しかし、そこにはほんの少しの捻りが含まれている。イジメから生きる希望をなくした主人公が何かをきっかけにして立ち直る。このあたりはまあ、よくあるパターンなのだろう。ただ、本作はそこに至る過程で、ある程度予想した展開を裏切る部分がある。それも悪い裏切り方ではなく、意外だが、心地のよい裏切り方だ。一時間弱という短い時間でありながら、キッチリと仕上げているあたり素晴らしいと思うが、序盤は多少冗長に感じられた。印象的な脇役の存在理由だったり、イジメの原因だったりは詳しく語られていない。おそらくそこまで語るには時間が足りなかったのだろう。

■ストーリー

高校に入学して以降、かつての親友から仲間はずれされるようになった楓。忙しい両親は楓に無関心。飛び降りようと学校の屋上に上がると扉には鍵がかかっていた。同級生の匠に屋上の開錠を頼むが、匠は開け方を説明してその場を立ち去ってしまった…。

■感想
イジメを苦にして、屋上に上ろうとする女の子。そして、鍵ならなんでも開けようとする男。二人の関係と、イジメの首謀者と、新任の先生。これらが、絡み合って物語を形作っているのだが、キャラクターによって温度差がまちまちだ。イジメの首謀者に対しては、ほとんど個性を感じることができなかった。昔、友達だったというだけで執拗に主人公をいじめる理由がよくわからない。新任の教師にしても、流れを予想させるハンディキャップを持ちながら、それを逆手にとる。しかし、ただ、それだけだった。

本作が優れているのは、主人公の女の子と自転車泥棒の男だろう。自転車泥棒の男にしても、何故盗むのか明確な理由はない。ただ、盗みたいからなどは、現代の無気力な学生を表現しているのだろう。無気力だが、何かを考え行動し群れることなく自分の主義主張を持っている。いじめられた女の子と自転車泥棒の交流が、本作を素晴らしいものにしていると思う。演じる俳優たちはすべて良かったと思うが、特にこの二人がよかった。

ありきたりなイジメをテーマにした作品と見えなくもない。そこに特別な新しさもない。ただ、流れを予想したのだが、それを裏切られ、なおかつラストの
希望にあふれる前向きな展開はよかった。いじめの理不尽な気持ち悪さや、周りの無関心さは気になったが、それが現在の高校生なのだろう。現在の高校生にこの自転車泥棒のような男がいるとは思えないが、創作としてしっかりと希望が持てる終わり方なのは好感がもてる。

短くとも、しっかりと作りこまれた作品は印象に残る。



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