アンテナ 


2006.11.13 エロとグロが蔓延した世界 【アンテナ】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
突然の妹の失踪。その謎を解くべく奔走する祐一郎。前半はどのようにして妹が消えたのか、そしてそこにはいったいどんな謎が隠されているのかという雰囲気だった。しかし中盤から後半にかけては作品のトーンは様変わりし、不思議な精神世界とエロが蔓延し、何もかもが煙に巻かれてしまったかのような感じだ。正直言うと現実的な回答を求めて読んでしまったので、この流れは納得できるものではなかった。最初から作品の目的にそぐわない読者だったのだろう。面白いミステリーになる要素はあったが、それを放棄したような形で終わっている。

■ストーリー

大学院生・祐一郎の妹は、十五年前のある朝、忽然と消えた。必死にその行方を探した家族も、七年前の父の死から、母は新興宗教にのめり込み、弟は発狂していく。なんとか家族を支えようとする祐一郎だが、SMの女王様ナオミと出会ったことで封印してきた性欲が決壊し、急速に何かが変容し始めていた……。

■感想
結局は求める物が違ったのだろう。リアリティ溢れるミステリーを目的として本作を読むと、確実に裏切られてしまう。そしてその中途半端と思われる終わり方に納得できないだろう。しかし別の見方をすると、最初から作品のトーンを把握しており、人間の内側にある精神世界をテーマにした作品を求めていたならば、十分楽しめたのだろう。

前半にかけては、妹が謎の失踪をとげ。超能力者や風水師の登場で何か深い因縁めいたものがあり、それが影響しているのかと興味深く読み進めることができた。このままのテンションでいき、最後にはリアルではないにしろ、それなりの結果をだしてくれればまた違ったのだが・・・。後半はエロと精神の世界に入り込んでしまった。

ミステリーの王道ともいえる伏線も幾つかあったのだが、それらはあっさりと放置されている。まさに作中のSM女王がやるようにこれが放置プレイなのか。数々の謎を放置しながら最後まで突っ走るその勢いはすごいものがある。そして精神世界に入り込むような場面では、エロとグロが蔓延している。おそらくこの作者の作品を好んで読む人はそれを理解し、免疫があると思うので問題ないだろうが、
初見の人は注意が必要かもしれない。

好みの問題だが、リアリティある作品が好みの人には向かない作品だ。



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