暗黒童話 乙一


2006.2.26 誇張されたグロイ描写 【暗黒童話】

                     
■ヒトコト感想
物語に一貫性がないような気がしてならなかった。前半部分は他人の目を移植したことにより、元の持ち主が見た映像を見ることができる話で後半は傷つけても相手に幸福と幸せを与えることができる男の話。この二つは確かに繋がっているのだが、必然性はない。二つの要素を無理やり同じ物語にしたような感じだ。これならばシンプルに別の物語にしたほうがしっくりくるような気がした。前半と比べると明らかに後半の方が恐怖感を増している。グロテスクな描写を自分の頭の中で映像化すると嫌悪感は倍増する。ちょっと不思議で気持ち悪くなりそうな物語だ。

■ストーリー

突然の事故で記憶と左眼を失ってしまった女子高生の「私」。臓器移植手術で死者の眼球の提供を受けたのだが、やがてその左眼は様々な映像を脳裏に再生し始める。それは、眼が見てきた風景の「記憶」だった…。私は、その眼球の記憶に導かれて、提供者が生前に住んでいた町をめざして旅に出る。悪夢のような事件が待ちかまえていることも知らずに…

■感想
目を移植することで記憶を再生することができる少女。前半部分はそこに終始している。少女が見た風景から眼球の記憶を呼び覚まし映像がフラッシュバックする。右目と左目で違う映像を見るなどというのは面白い。ありがちな展開だが、合間に登場する童話の中で眼球を持ってくる鴉と少女の話とリンクしており、なんとも不思議な展開になっている。ここまで読むと、これからどんな展開になっていくのか非常に気になる流れだ。

その後、少女が眼球の記憶をたどりながら元の持ち主を発見することから物語りは大きく展開していく。ここで登場する、生き物を生かしながら傷つけることができる男が本作のメインなのかもしれない。少女と男が出会う必然性はあるのだが、物語として二つを一緒にする必然性を感じることができなかった。なぜこれを一緒にしなければならなかったのか理由がよくわからない。

後半部分は、今までとはうって変わってグロテスクな描写が多数登場する。その中でも男が人間を生きたまま解体するシーンや二人の人間を結合させるシーンなど、場面を想像するとかなりの恐怖感がわいてくる。しかし救いなのが、やられる人々が苦痛を感じることなく、幸福感で一杯だという表現があるからだろう。

二つの要素が盛り込まれているが、前半と後半はまったく別な物語とした方がシンプルで分かりやすいような気がした。




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