アメリカン・ドリーム 


2008.3.20 アメリカが世界だ? 【アメリカン・ドリーム】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
時代を感じすぎる作品。初版はS60年らしい。ということは、80年代初期のことなのだろう。エッセイというものはどうしても時事ネタを扱う関係上、時間の経過を感じずにはいられない。特に本作のように特別時事ネタに敏感な作者であればなおさらだ。アメリカ文化にどっぷりとつかりきった日本に対する悪口を言ったかと思えば、作者自身もその一端を担っていたり。バブル景気に入りかかった時代を物語るように、金満日本をにおわせる雰囲気があったり。今読むと、その時代を感じることができ、なんだか少し面白くなってきた。もし、本作をリアルタイムに読んでいたら(ある程度理解できる年齢で)かなり影響を受けていただろう。

■ストーリー

佐世保でのGIとの出会いからエンタープライズ闘争、基地の町福生での生活と、絶えずアメリカと対峙してきた著者が、アメリカとは何か、そしてそれと分ちがたく結びついている日本文化とは何かを鋭く問いかける。「アメリカが世界だ」と言い切る著者が“父なるアメリカ”への思いを熱く綴ったエッセイ集。

■感想
「アメリカが世界だ」という思い、今は通用しないだろう。昔ほどアメリカの影響力が強くない現在。確かにアメリカ文化は浸透し、バブル景気で浮かれていた日本が、いったんは没落し、そしてまた盛り返してきたと思ったら、雲行きが怪しくなってくる。相変わらず経済的にはアメリカが世界を牛耳っているといってもいいが、それでも昔ほどの影響力はない。ある程度予言的なニュアンスを含んだ文章もあり、それがことごとく当たっていたのも驚いた。多国籍企業の台頭など、そのまま今のマイクロソフト、グーグルに通じる部分なのだろう。

本作にはいくつかのアメリカに関係したエッセイが収録されている。興味深いのは連載エッセイだけであり、エルビス・プレスリーに関しては特に何も感じることはなかった。作者の生活環境からその時代では、普通とは違った感覚が養われたのだろう。そう考えると、先進的とも言えるが、すべてが正しいわけではない。恐らく作者は今、本作を読むと、もしかしたら恥ずかしくなるのかもしれない。

日本文化とは何か、だとか、アメリカとの従属関係だとか、いろいろと語られてはいるが、結局は過去だ。ただ、それを単純な過去のことと流し読みするのではなく、現在に通じる部分をかすかだが感じることができる。コーラとハンバーガーは好きだが、アメリカにどっぷりつかるつもりはない

なんとなくだが、この時代からも中国がある程度注目されていたというのに、一番驚いた。



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